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オマーンが国家カーボンクレジット市場枠組みを発表、湾岸産油国の脱炭素

2026.05.17 読了 約4分
オマーンが国家カーボンクレジット市場枠組みを発表、湾岸産油国の脱炭素
出典:https://mem.gov.om/public/news/tlvat29nqumq6j0d82ccd14t

オマーン政府は5月13日、ネットゼロ戦略の更新版およびカーボン市場規制枠組みを発表した。2050年カーボンニュートラル達成を最終目標とし、2035年までに温室効果ガス排出量を2024年比で33%削減する。

国家炭素登録簿「メイザーン(Meezan)」を稼働し、パリ協定6条市場でのITMO供給国化を視野に置くVerraGold Standard、CORSIAなど主要な国際基準への準拠を明示し、湾岸産油国の脱炭素戦略における新たな極の形成を狙う。

排出量の現状と33%削減目標の二層構造

オマーンの2024年の温室効果ガス排出量は約9,400万トンCO2eであり、削減策を講じない場合は2050年に約1億2,700万トンへと拡大する見込みである。石油・ガス、運輸、電力の3 部門が国家排出量全体の約70%を占めており、これらが削減ロードマップの主要対象となる。

2035年までの33%削減目標は、義務目標7%と条件付き任意目標26%で構成される。義務目標は国内施策で実現可能とされる範囲であり、条件付き任意目標は国際的な資金・技術移転と国内人材育成を条件として位置づけられる。条件付き分が達成された場合のみ、33%全体が実現する構造である。

削減経路は限界削減費用曲線(MACC)に基づき3 段階に分類される。低コスト層は再生可能エネルギー、エネルギー効率改善、公共交通で構成され、中コスト層はCCSと水素利用、高コスト層は完全電化と水素モビリティが位置づけられる。経済財政状況に整合する経路が選択されたとされる。

国家登録簿メイザーンとパリ協定6条への対応

カーボン市場規制枠組みの中核として、国家炭素登録簿メイザーンが立ち上げられる。カーボンクレジットの発行、移転、リタイアメントを一元管理し、二重計上防止と国際整合性の確保を組み込む設計である。

国際基準への準拠については、VerraGold Standard、CORSIAが明示的に参照される。これにより、オマーン産カーボンクレジットがボランタリー市場と航空業界の規制対応の双方に流通する流路が確保される。パリ協定6条への対応では、ITMOの発行・移転・国家登録簿への記録、移転承認書の発行プロセスが整備されている。

戦略文書は7 部門の戦略的セクターを対象とし、国際投資の呼び込みと「高潔性の高いカーボンクレジット」供給国としての位置取りを目指すとしている

産油国経済とカーボン市場戦略の統合

オマーンの2025年の原油・コンデンセート生産は1日約100万バレル、年間総生産は3億6,580万バレルであり、化石燃料収益が国家経済の根幹を成す。同時に、グリーン水素戦略では2030年までに年間100万トン生産、再生可能エネルギー容量26.6GWを目標とし、累計投資は440億ドル(約 6兆9,800億円)に達する。

CBAMへの対応は更新版戦略において競争力強化要因として明示的に位置づけられる。化石燃料・鉱産物の輸出依存度が高い産油国にとって、CBAMは輸出市場における価格競争力への直接的脅威であり、国内脱炭素投資は輸出維持のためのコスト削減施策として戦略的に整合する。

オランダとの間では液化水素回廊整備の合意が成立しており、欧州向け輸出インフラが整備段階にある。化石燃料収益を活用して脱炭素技術と水素生産への投資を行い、長期的に輸出収益の構成を再編する構造である。

編集デスクの視点

オマーンの今回の発表は、湾岸産油国の脱炭素モデルとして位置づけられる。

UAEのCOP28主導とサウジアラビアの大規模植林・産業脱炭素に続き、オマーンはITMO供給国機能と国内規制市場機能のハイブリッドモデルを採用した。CBAMを競争力強化要因として位置づける構造は、湾岸産油国が国際的なカーボン規制を所与の前提として組み込み、自国経済戦略に統合する典型例である。

ただし義務目標が7%にとどまる構造は、産油国脱炭素計画の現実主義を明確に示している。条件付き任意の26%は国際資金・技術移転に依存しており、達成不確実性は構造的に高い。

化石燃料収益の規模と脱炭素投資の規模が拮抗する経済構造を持つ産油国にとって、義務目標を高く設定する余地は限られており、メイザーンを通じた国際カーボンクレジット供給が条件付き分の達成手段として機能するかが、戦略全体の信頼性を左右する。

参考:https://mem.gov.om/public/news/tlvat29nqumq6j0d82ccd14t

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カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。