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世界の炭素価格収入が過去最高1,070億ドルに到達、カバー率はGHGの約30%へ

2026.05.21 読了 約4分
世界の炭素価格収入が過去最高1,070億ドルに到達、カバー率はGHGの約30%へ
出典:https://www.worldbank.org/en/publication/state-and-trends-of-carbon-pricing

世界銀行グループは2026年5月19日、年次報告書『State and Trends of Carbon Pricing 2026』を公表し、2025年の世界のカーボンプライシング制度による公的収入が過去最高となる1,070億ドル(約17兆130億円)に達したと明らかにした。前年比で2%の増加であり、2016年の300億ドル未満から10年間で3倍以上に拡大した。

世界のカーボンプライシング収入推移(2016–2025)

0 30 60 90 120 収入(10億ドル) 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025 107 104 出典:World Bank Group『State and Trends of Carbon Pricing 2026』を基に概算で図示

直接的なカーボンプライシング制度の運用件数は世界で87件に達し、前年から7件増加した。

これにより、世界のGHG排出量の約30%が何らかの直接的な炭素価格の下に置かれることとなった。ブラジルやトルコなど現在制度設計を進める国々が運用を開始すれば、カバー率は約3分の1に達する見通しである。

中所得国の参入が進む地理的拡大

2025年に新たにETSまたは炭素税を導入した国として、報告書はインド、日本、モーリタニア、セルビア、ベトナムの5カ国を挙げた。日本は2026年度から本格稼働するGX-ETSの段階的移行が進む段階であり、世界銀行の集計上は新規導入国として位置づけられた。

注目すべきは、すべての主要中所得経済国が直接的なカーボンプライシング制度を既に導入済みか、導入計画段階にあるという到達点である。これまで先進国に偏在していたカーボンプライシングの地理的分布が、新興市場へと本格的に拡張する局面に入った。

ブラジルは2024年12月に成立した法律に基づくETS整備を進めており、トルコもEUのCBAM対応を念頭に制度設計を加速させている。中所得国の参入は、世界の炭素価格地図を塗り替える構造変化である。

価格水準は10年で倍増、ただし依然として低位

世界の平均直接炭素価格は約21ドル/tCO2e(約3,339円/tCO2e)に達し、前年比7%上昇、2016年の10ドル/tCO2eから10年で倍増した。価格上昇の主たる牽引役はETSにおける排出枠価格の上昇である。

ただし、IPCCや国際機関が1.5度目標整合に必要と試算する社会的炭素コスト水準には依然として大きな乖離がある。87政策の単純平均が21ドル/tCO2eにとどまるという事実は、カバレッジ拡大と価格適正化が必ずしも同時進行していない構造的課題を示している。

コンプライアンス市場の拡大とボランタリー市場の二極化

報告書は、規制市場の堅調な拡大とは対照的に、ボランタリーカーボンクレジット市場で異なる動きが進行していることも指摘している。

世界のカーボンクレジット発行量は2024年から2025年にかけて8%増加した一方、平均価格は全般的に軟化した。ただし例外として、CORSIA適格プロジェクト、ならびに高評価の森林保全・再植林プロジェクトは依然としてプレミアム価格を維持している。

これは、コンプライアンス市場における政策的需要の拡大と、ボランタリー市場における品質基準の厳格化と需要の選別が並行して進む、市場の二極化を示す動きである。

一方で、コンプライアンス市場のカバー率拡大とボランタリー市場の選別が進行しても、世界排出量の残る7割は依然として直接的な炭素価格の対象外である点には留意が必要であり、制度カバレッジの量的拡大が気候目標整合にどこまで貢献するかは引き続き論点となる。

世界の炭素価格制度がGHGの約30%をカバーするに至った一方、本報告書が示す最も重要な構造変化は、コンプライアンス市場とボランタリー市場の役割分化が決定的になった点にある。規制市場が政策需要に支えられて拡大し、ボランタリー市場では発行量増・価格軟化と並行して、CORSIA適格や高品質森林カーボンクレジットへの選別的プレミアムが定着しつつある。

日本企業のカーボンクレジット調達戦略は、この二極化を前提に再設計する局面にある。GX-ETSの本格稼働で規制対応需要が制度的に固定化する一方、ネットゼロ目標達成のためのボランタリーカーボンクレジット調達では、価格軟化の恩恵を享受しつつも、評価機関や市場が選別する高品質カーボンクレジットへのアクセス確保が競争上の論点となる。

平均価格21ドル/tCO2eという水準は10年で倍増したものの、依然として気候目標整合に必要とされる水準には遠く、カバレッジ拡大と価格上昇のどちらが今後の制度進化を主導するかが、次の10年の規制市場の方向を左右する。

参考:https://www.worldbank.org/en/publication/state-and-trends-of-carbon-pricing

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カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。