GHGプロトコルは6月30日、温室効果ガス(GHG)算定基準「土地部門および除去(LSR)標準」の実務ガイダンスを公表した。農業由来の排出算定に加え、技術由来の炭素除去(CDR)や炭素回収・貯留(CCS)をどう会計処理するかを具体的に規定する内容で、標準は2027年1月1日に発効する。
ガイダンスは全20章構成で、標準本体と章立てを揃えた実装解説書となっている。マース、ペプシコ、ゼネラルミルズなど10社のケーススタディを収録するほか、サンプル報告テンプレートと報告要件チェックリストを同時公開した。標準は2020年からの5年間で、300名超の外部レビュアーと96社のパイロットテストを経て策定されている。
焦点は除去とCCSの会計区分にある。
ガイダンス第14章は、点源回収による炭素回収・貯留(CCS)を排出回避として扱い、除去としては計上しないと明記した。除去に計上できるのは、大気中のCO2を直接回収する直接空気回収・貯留(DACCS)と、バイオマス由来のCO2を地中貯留するバイオエネルギー炭素回収・貯留(BECCS)に限られる。岩石風化促進(ERW)は技術由来除去に位置づけられるものの、算定手法の研究が未成熟として今回は詳細な算定基準を収録していない。地質貯留からの漏出は「リバーサル」として排出計上する義務も課された。
一方で、森林炭素の扱いは今回も見送られた。
LSR標準は当初から農業と除去技術のみを対象とし、森林は対象外としてきた。策定過程で最後まで残った2つの論点のうち、農業リーケージは2025年に独立基準委員会(ISB)が決着させたが、森林炭素会計はなお未解決のまま持ち越されている。GHGプロトコルは今回、森林炭素会計に関する情報提供依頼(RFI)を新たに開始し、2027年2月1日まで意見を募る。
CCSと除去の会計区分が明文化された意味は大きい。点源回収によるCCSを除去と混同して報告する企業は、今後GHGプロトコル準拠を名乗れなくなる。DACCSとBECCSに限定した除去の定義は、除去系カーボンクレジット市場における品質基準の議論とも整合的であり、企業のGHGインベントリと市場の双方で同じ物差しを使う土台が整った。
ただし、森林炭素会計が5年の策定プロセスを経てなお決着しなかった事実は軽くない。農業リーケージが決着した一方で森林だけが取り残された構図は、技術的な難しさというより、ステークホルダー間の利害調整が最後まで折り合わなかったことを示している。ISBという新体制下のRFIが実効的な合意形成の場になるかどうかは、次のガバナンステストになる。
参考:https://ghgprotocol.org/blog/announcement-ghg-protocol-launches-land-sector-and-removals-lsr-guidance-support-lsr-standard