本文へスキップ
最新ニュース
海外ニュース

GHGプロトコル、初代CEOにティム・モヒン氏を任命 ISO連携深化と2028年GSTに向け体制強化

2026.05.02 読了 約4分
GHGプロトコル、初代CEOにティム・モヒン氏を任命 ISO連携深化と2028年GSTに向け体制強化
出典:ghgprotocol

国際的な温室効果ガス(GHG)算定基準を策定するGHGプロトコルが、初代最高経営責任者(CEO)にティム・モヒン(Tim Mohin)氏を任命したと発表した。同氏は2026年6月1日付で就任する。

CEO職の新設は、約30年にわたり世界資源研究所(WRI)と持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)の共同パートナーシップとして運営されてきた同団体の組織ガバナンス強化の一環であり、規制利用の拡大に伴う制度的成熟の表れと位置付けられる。

COP30マンデートとISO連携の構造化

今回のCEO新設の直接的背景にあるのは、COP30議長国マンデートに基づくGHG会計のグローバル整合化である。GHGプロトコルは国際標準化機構(ISO)と共同で、2028年の第2回グローバル・ストックテイク(GST)に向けたCOPアクション・アジェンダの一環として、世界のGHG算定の調和を主導することが付託された。

両機関の連携は段階的に深化している。

直近では2026年4月9日、製品レベルの算定基準を共同開発するための合同作業部会(Joint Working Group)の設置が発表されたばかりだ。今回のCEO人事は、この連携を実装段階で推進する執行機能の強化と読み取れる。

基準策定×事業会社×政府×コンサル

モヒン氏は基準策定組織、事業会社、政府、戦略コンサルティングの四領域を横断する経歴を有する。直近では戦略コンサルティング大手のボストン・コンサルティング・グループ(BCG)でクライメート&サステナビリティ部門のパートナー兼ディレクターを務めていた。

それ以前は、サステナビリティ報告基準を策定するグローバル・レポーティング・イニシアチブ(GRI)のCEO、インテル(Intel)、アップル(Apple)、AMDの各社で上級サステナビリティ職を歴任。さらに米国環境保護庁(EPA)および米上院での政策実務経験も持つ。

モヒン氏は声明で、GHGプロトコルが「企業の気候コミットメント、規制開示制度、ネットゼロ目標、カーボンクレジット市場の基盤」であると位置付けたうえで、「世界で最も重要な気候インフラの仕事」と述べた。

組織ガバナンスの成熟段階

GHGプロトコルは過去2年で組織基盤の強化を進めてきた。

2024年にステアリング・コミッティと独立基準審議会(ISB)を設置し、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)およびISOとの提携を正式化している。S&P500構成企業のうち情報開示を実施する企業の97%がGHGプロトコルを用いてGHGインベントリを報告しており、事実上のグローバル標準として機能している。

ステアリング・コミッティ議長のジェラルディン・マチェット(Geraldine Matchett)氏は、CEO職新設について「期待の高まりに応えつつ基準の独立性と健全性を維持するための制度成熟の自然な一歩」と位置付けた。

20年以上にわたり同団体を率いてきたグローバル・ディレクターのパンカジ・バティア(Pankaj Bhatia)氏は、今回の体制移行に伴い退任する。

「権限分散」への留保

一方で、ISSB/IFRS S2、ISO、CDP、SBTi等の周辺機関との役割分担が複雑化するなか、CEO設置のシグナル価値は限定的との見方もある。GHG会計のレイヤーが多層化するほど企業の実務負荷は増大しうるため、モヒン氏には機関間の役割整理と実務負担軽減における実効性が問われる。

日本市場の観点では、SSBJ基準(IFRS S2準拠)およびGX-ETSがGHGプロトコルに依拠している以上、今回のリーダーシップ刷新は開示・算定実務に直結する論点である。

BCG出身という経歴は企業実務の現実解と整合的な基準改訂を期待させる一方、注視すべきはISOとの連携深化の方向性だ。

製品レベル基準の合同作業部会設置に続くCEO人事は、単なる協業を超えてGHG算定の「ISO標準化」へと向かう構造変化の前段とも読める。GHGプロトコル単独の動向ではなく、ISO×GHGプロトコル×ISSBの三層連携の進展を継続的に追う局面に入った。

参考:https://ghgprotocol.org/blog/release-greenhouse-gas-protocol-appoints-tim-mohin-ceo-marking-new-phase-global-standards#:~:text=Geneva%2C%20Switzerland%20(April%2028%2C,step%20in%20the%20organization’s%20evolution.

関連タグ GHGプロトコル
カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。