クロアチアは、欧州連合(EU)が支援する国家復興・強靭化計画の一環として、炭素回収・貯留(CCS)の開発を後押しするため2.7百万ユーロ(約4億3,700万円)の予算を割り当てた。
同国内の地質的なCO2貯留ポテンシャル評価と、産業脱炭素に向けたインフラ基盤の整備を狙う。
予算の中核は、深部塩水帯水層を含むクロアチア国内の陸上・海洋の地質構造マッピングに充てられる。あわせて、ボツコヴァツ(Bockovac)サイトに想定される貯留施設に関するpre-FEED(事前基本設計)スタディも実施される。
地質評価のみならず、CCSインフラに必要なシステム設計ツール・ソフトウェアの開発、ステークホルダー対応や啓発活動も対象に含まれる。
クロアチア政府は、長期的な炭素貯留ポテンシャルの可視化と、商用展開に向けた準備度の整理を目指す。
クロアチアは130万トン超のCO2貯留能力を有すると推定されており、欧州の地域炭素管理戦略における潜在的な貢献国と位置付けられている。
並行して進む産業案件には、ホルシム(Holcim)が手掛けるセメント製造分野のCO2回収プロジェクト「コデコ・ネットゼロ(KOdeCO Net Zero)」のほか、肥料生産・精製分野での回収計画が含まれる。さらに、ナシツェ(Našice)のセメント工場でのCO2回収、アンモニア生産施設に紐づく貯留事業、シサク(Sisak)のバイオリファイナリーが枯渇ガス田を活用した貯留を計画している。
EUは、EU革新基金(EU Innovation Fund)などのメカニズムを通じてCCS案件への資金供給を拡大している。
スウェーデンのマルメ拠点や英国のCO2輸送ネットワークなど域内各地でCCSハブ形成が加速するなか、クロアチアの今回の措置は、初期段階のインフラ開発リスクを公的資金で吸収し、後続の民間投資を呼び込む典型例と評価できる。業界では、CCS市場が2030年までに4倍規模に拡大するとの見方も示されている。
本件投資の主軸であるCCSはあくまで産業排出源からの「排出回避(avoidance)」に分類される技術であり、大気中から既往のCO2を除去する炭素除去(CDR)には該当しない点である。
直接空気回収・貯留(DACCS)、バイオエネルギー炭素回収・貯留(BECCS)、バイオ炭、岩石風化促進(ERW)等のCDR技術とは性質を異にし、ボランタリーカーボンクレジット市場における除去系カーボンクレジットの品質要件(永続性・追加性・測定・報告・検証(MRV)の厳格性)とは別の文脈で扱われる。
ただし例外として、シサクのバイオリファイナリー案件は、投入原料が生物起源で、かつ枯渇ガス田での地中貯留が確実に実装されれば、BECCSとしてCDRに該当し得る。実装条件次第では、将来的に高品質なCDRカーボンクレジットの供給源となる可能性があり、方法論やオフテイク契約の動向を継続的に注視する必要がある。