ドイツの気候技術企業ウカネオ(Ucaneo)は7月2日、ベルリン・マルツァーンで同国最大となる直接空気回収(DAC)施設を稼働させた。年間処理能力は150トン、回収したCO2の純度は99.9%を超える。回収分の一部は地中に永続的に貯留され、DACと地中貯留を組み合わせたドイツ初の検証済みプロジェクトとなる。ウカネオの発表によれば、DACで回収したCO2を永続貯留する企業は世界でまだ5社にとどまり、同社はその一角に加わる。
ウカネオの回収プロセスは完全電化された電気化学方式で、従来型DACが必要とする熱再生工程を持たない。そのため再生可能エネルギーの発電量や電力市場価格の変動に応じて稼働を柔軟に調整できる。回収したCO2は地中貯留による除去系カーボンクレジットの創出のほか、持続可能な航空燃料やメタノールなど工業向け原料としても供給される。
今回の施設はパイロット運用から商用展開への移行点にあたる。
現行施設の約10倍の処理能力を持つ商用プラントの建設が2027年に始まる計画で、ウカネオは2035年までに年間5億トンのCO2回収を目標に掲げる。これはカナダの年間CO2排出量に相当する規模である。この目標は6月25日に発表されたシーメンス(Siemens)との提携とも連動しており、シーメンスは自動化・デジタル化プラットフォーム「Xcelerator」を通じ、ウカネオおよびそのライセンス先事業者向けに標準化された自動化テンプレートを構築する役割を担う。
需要側の制度環境も整いつつある。EUのReFuelEU規則は、EU域内空港で供給される航空燃料に占めるeケロシンの比率を2030年までに1.2%、2050年までに35%とするよう義務付けている。EUの炭素除去認証枠組み(CRCF)は、永続性のある除去系カーボンクレジットの認証制度を整備しており、DAC事業者にとってCO2の直接販売に次ぐ商業的な収益経路となる。
今回の稼働は、除去系カーボンクレジットの供給基盤がまだ薄い中での追加事例という位置づけにとどまる。年間150トンという規模はギガトン単位で語られるDAC業界の目標値に対しては小さく、「世界5社目」という序列づけもウカネオ自身の発表に基づくものである。
判断材料になるのは今回の施設そのものよりも、約10倍規模とされる次期商用プラントが2027年の着工予定を実際に守れるかどうかである。シーメンスとの自動化提携は展開コストと再現性という実務上の課題に対応するものであり、掲げられた回収目標と実際に供給される除去系カーボンクレジットの間にある溝を埋められるかは、この提携の実行力次第である。