ベトナム財務省は2026年5月12日、国内炭素取引所におけるGHG排出枠およびカーボンクレジット取引の監督に関する通達48/2026/TT-BTC号を発行し、同日付で施行した。
2028年12月31日までのパイロット運用に向け、国家証券委員会(State Securities Commission、SSC)、ベトナム証券取引所(Vietnam Exchange、VNX)、ハノイ証券取引所(Hanoi Stock Exchange、HNX)、ベトナム証券保管・清算公社(Vietnam Securities Depository and Clearing Corporation、VSDC)の役割分担と報告義務が規定された。
既存の証券市場インフラを基盤としてコンプライアンスカーボンクレジット市場を構築する設計が明確になり、東南アジアにおける本格的なETS稼働に向けた制度整備が前進した。
通達48/2026/TT-BTC号は全4章16条で構成される。
第1章「一般規定」(第1〜3条)、第2章「国内炭素取引所におけるGHG排出枠およびカーボンクレジット取引の監督」(第4〜12条)、第3章「VNXおよびVSDCのSSCに対する報告制度」(第13〜15条)、第4章「施行日」(第16条)からなる。
通達の上位法令としては、2020年環境保護法、GHG排出削減およびオゾン層保護に関する政令06/2022/ND-CP号(2022年1月7日付)、その修正・補足である政令119/2025/ND-CP号(2025年6月9日付)、国内炭素取引所に関する政令29/2026/ND-CP号(2026年1月19日付)が位置する。
今回の通達は、これらの政令で定められた制度骨格に対し、市場運用段階で必要となる監督・報告の手続きを具体化するものである。GHG排出枠およびカーボンクレジットの取引は、国家レジストリと相互接続された炭素取引システムを通じ、国内炭素取引所で行われる構造が確定した。
通達は市場運営にかかわる主体ごとに監督責任を割り当てる。SSCが主要規制当局として市場全体を統括し、すべてのコンプライアンス報告と取引報告を受領する。VNXおよびHNXは現物取引システムの運用、取引執行、日常的な取引監視および取引参加者の監督を担う。VSDCは集中登録、保管、清算、最終決済を担当する。
環境保護を所管する機関と炭素取引システム運営主体との間の異省庁間管理を前提とした設計であり、環境政策と金融市場規制の二系統が一つの市場運営に交差する構造である。
VNX、HNX、VSDCはSSCに対し、取引活動、保管業務、決済、取引監視結果、取引参加者の監督結果に関する四半期および年次の定期報告を提出する義務を負う。これに加え、状況に応じた随時報告および要請ベースの報告制度も規定された。
取引前検証も厳格化された。
環境十全性を担保するため、すべての排出枠およびカーボンクレジットは、VSDCに保管される前に国家レジストリに事前登録されなければならない。取引参加者は売買注文を出す前に十分な保有資産または資金の検証を経る必要がある。
これによって、市場操作、システム濫用、誤情報の防止を目的とする監督枠組みが法的に整備された。
ベトナムが選択した「証券市場インフラ流用モデル」は、東南アジアの炭素市場制度設計における一つの定型に位置づけられる。財務省およびSSCを中心とした制度設計は、市場規律・清算決済・参加者監督において証券市場で確立された手法をETSに移植する合理性を備える一方、環境政策と金融規制という二系統の所管が交差する構造的特性を内包している。
シンガポールやインドネシアでも既存の取引所基盤を活用した炭素取引プラットフォームが稼働しており、ベトナムは同じ方向で制度を組み立てた。
今回の通達はレジストリ連動、取引前検証、定期・随時報告という監督・コンプライアンスの基本機構を具体化したものであり、パイロット運用期間中の制度実装が、アジア地域における新興ETSモデルの基準点となる。