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オランダ2025年温室効果ガス排出量、電力部門の急増で前年比0.8%増加 EU ETSの下でも排出増という逆流

2026.03.15 読了 約4分
オランダ2025年温室効果ガス排出量、電力部門の急増で前年比0.8%増加 EU ETSの下でも排出増という逆流
出典:イメージ

オランダ統計局(CBS)とオランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)が2026年3月11日に発表した暫定統計によると、オランダの温室効果ガス(GHG)排出量は2025年に総計1億4,560万トン(CO2換算)に達し、2024年比で0.8%増加した。製造業・モビリティ部門の削減が進む一方、電力部門の排出量が22%急増したことが全体を押し上げた。

欧州連合(EU)域内の排出量取引制度(EU ETS)が稼働するなかでの排出増は、炭素価格シグナルだけでは短期的な電力需給変動を制御しきれないことを示す事例として注目される。

電力部門が主因 石炭25%増、天然ガス11%増

電力セクターの排出量急増は、主としてドイツおよびベルギーからの電力輸入需要の高まりに起因する。オランダからドイツへの電力輸出は前年比50%増、ベルギー向けも同25%増と急拡大した。国内の再生可能エネルギー発電量の増加ではこの需要を吸収しきれず、2025年前半の風況悪化も重なり、石炭火力発電が25%増、天然ガス火力発電が11%増という結果を招いた。

電力部門がIPPCガイドライン上の「分野別残余排出目標」を達成するためには、2025年から2030年の5年間で同部門の排出量を半減させる必要がある。

製造業・モビリティは削減進展

製造業の温室効果ガス(GHG)排出量は2024年比4.5%減となった。化学産業を中心とした天然ガスおよび石油残渣ガスの消費削減が主因である。ただし2030年の分野別指標目標を達成するには、産業排出量をさらに3分の1削減する必要がある。

モビリティ部門も排出量が4%減少した。電気自動車普及の加速とガソリン・ディーゼル車の台数減少が貢献している。2030年目標には、さらなる25%削減が求められる。

2030年目標達成に年間8.7メガトン削減が必要 歴史的速度の約4倍

オランダの気候法は2030年までに1990年比55%削減を義務付けており、その目標値は残余排出量102メガトン(CO2換算)に相当する。現時点での削減率は1990年比36%減にとどまっており、目標達成には2025年から2030年の5年間で年平均8.7メガトンの削減ペースが求められる。これは1990年から2024年までの年平均削減実績(2.4メガトン)の約3.6倍という高い水準だ。

2025年のCO2排出原単位(GDPあたりCO2排出量)は2015年比34%低下にとどまり、2023年以降の改善が事実上停滞していることもCBSは指摘している。

EU ETSとの関係、炭素価格が電力部門を制御できない構造的問題

今回の排出増は、EU ETSが機能する域内においても、需給ショックと再生可能エネルギーの間欠性という構造的課題の前では炭素価格シグナルが短期的に電力構成を変えられないことを示している。排出権価格が上昇しても、隣国からの需要急増と再エネ出力不足が重なれば、既存の石炭・ガス資産が稼働を余儀なくされる。これは炭素リーケージや域内の排出枠需要変動にも波及しうる。

なお、オランダはEU加盟国として炭素国境調整メカニズム(CBAM)の課税対象外であるが、同国の排出動向はEU全体の削減軌跡に直接影響し、GX-ETSの設計議論を参照する日本の政策立案においても参考事例として機能する。

オランダの事例は、電力輸出需要という外部要因が国内の排出量管理を攪乱しうることを示しており、国際連系線を持つ国家間でダブルカウントを生じさせず排出責任を適切に帰属させる制度設計の難しさを改めて提起している。

日本においても、GX-ETSフェーズ2の設計において電力輸出入シナリオを想定した排出量帰属ルールの整備は不可欠であり、電力・エネルギー分野を主要事業とするJERAや東京ガスなどにとって、排出量管理と炭素コストの予見可能性確保が喫緊の課題となっている。

また、EU ETSとの将来的な連携・整合性を視野に入れるならば、今回のような「制度整備済みでも排出増」という事象の分析は政策根拠の強化に直結する。

参考:https://www.cbs.nl/en-gb/news/2026/11/increase-in-greenhouse-gas-emissions-in-2025#:~:text=11/03/2026%2006:,megatons%20higher%20than%20in%202024.

関連タグ ETS 欧州
カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。