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スイスのITMO購入資金、供給遅延で数年内に消失の懸念

2026.06.22 読了 約3分
スイスのITMO購入資金、供給遅延で数年内に消失の懸念
出典:KliK Foundation

ボンで開催中のSB64気候会議で、スイスの炭素調達主体がITMO(国際的に移転される緩和成果)の購入資金について警告を発した。資金は潤沢に確保されているものの、深刻な供給ボトルネックと国内の政治的圧力により、数年内に手元から失われかねないという。

潤沢な資金と乏しい供給

スイスはパリ協定6条2項を活用した二国間取得の先行国であり、途上国との協定を通じて緑化事業を資金支援する見返りにカーボンクレジットを取得してきた。資金プールの管理は、義務履行主体であるクリック財団(KliK Foundation)が担う。

問題は資金ではなく供給側にある。

買い手としてのスイスは購入原資を厚く積み上げている一方、ITMOを生み出すホスト国側の国内承認手続きが遅く、調達プロセスが著しく停滞している。業界報道によれば、担当者はこの状況を「金の袋の上に座っている」と表現した。待機資金を動かすには、ホスト国が承認プロセスを加速させる必要があるとの認識を示している。

国内政治という時間軸

確保された資金が実際の排出削減の確保に向けて速やかに展開されなければ、スイスの政策当局は未消化の気候資金を他用途へ振り向ける圧力に直面しうる。資金が活用されなければ近い将来に失われるという「使わなければ消える」構図である。

クリック財団は、時間的圧力、流動的なルール、買い手とホスト国双方にとって堅牢な意思決定基盤の必要性という、6条実装に内在する複雑な相互関係を指摘している。

今回の警告は、6月17日にザンビア緑の経済環境省とクリック財団が共催したSB64公式サイドイベントでの議論を背景とする。ザンビア、セネガル、マラウイ、スイスの実務担当者が登壇し、メカニズムの整合性を担保しつつ具体的成果を生み出す方策が共有された。

編集部の視点

今回の警告は6条2項市場の新たな欠陥ではなく、既知の構造的課題が買い手の言葉で改めて可視化されたものと位置づけられる。

6条2項の隘路は資金の不足ではなく、資金とホスト国の承認能力の非対称にある。買い手国が原資を積み上げても、承認・登録の処理能力が追いつかなければITMOは取引へと結実しない。供給を律速するのはホスト国の制度運用であり、買い手の資金力ではない。

加えて、確保された気候資金が政治的に恒久でない点が論点となる。滞留する資金は国内予算の他用途と競合し、政権交代や財政圧力のなかで再配分の対象となりうる。6条2項の取引速度は、ホスト国の承認加速だけでなく、買い手国側で資金が確保され続けるかという政治的持続性にも左右される。

参考:https://www.klik.ch/en/news/news-article/sb64-side-event-klik-foundation-with-zambia/

関連タグ ITMO パリ協定6条2項
カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。