熱炭酸カリウム技術を軸に、難削減セクター向けの統合ソリューションを共同提供
イタリアの大手エネルギーインフラ企業、サイペム(Saipem S.p.A.)とノルウェーの炭素回収技術プロバイダー、カプソル・テクノロジーズ ASA(Capsol Technologies ASA)は2026年3月5日、炭素回収・貯留(CCS)分野における非独占的協業協定の締結を発表した。両社は熱炭酸カリウム(HPC:Hot Potassium Carbonate)技術に基づく産業規模プロジェクトの共同開発を進め、急拡大するCCS市場の獲得を目指す。
今回の協定は、両社がすでに実績を持つ既存の協力関係を正式に発展させるものだ。
スウェーデンの地域熱供給・電力大手、ストックホルム・エクサジ(Stockholm Exergi AB)が推進するバイオエネルギー炭素回収・貯留(BECCS)大規模プラントにおいて、サイペムはEPC(設計・調達・建設)コントラクターとして参画し、カプソルの炭素回収技術が生物起源CO2の回収に採用されている。同施設は現在建設中であり、完成後はスウェーデンの気候目標達成に向けた重要インフラとなる見通しだ。
この実地連携で培ったノウハウを土台として、両社はHPC技術ベースのCCS案件における入札・テンダーへの共同参加を可能にする仕組みを整備する。提供パッケージには、カプソルの効率的かつコスト競争力の高いCO2回収技術、最適化されたエンジニアリング設計、標準化・モジュール化されたソリューション、そしてサイペムの複合エネルギープロジェクトにおける豊富な実行能力が統合される。
協定の主眼は、産業大規模排出源が炭素回収インフラを導入する際の複雑さを低減することにある。単一の統合ソリューションとして技術・設計・実装を一括提供することで、重工業やエネルギーなど難削減セクターにおける迅速かつ確実な導入を可能にする設計だ。
なお、サイペムはすでに23億ドル(約3,630億円)を超えるCCSバックログを報告しており、同社にとってこの分野は中核的な事業成長軸となっている。今回の協定は、大規模ソリューションに加えて中小規模排出源向けのモジュール型技術(独自の炭酸カリウムベース溶液「Bluenzyme™」を含む)も包含する、より広範なCCSポートフォリオ拡充戦略の一環でもある。
BECCSや産業CSSプロジェクトから生成される除去系カーボンクレジットは、ボランタリーカーボンクレジット市場における高品質・高耐久性クレジットとして需要が高まっている。ストックホルム・エクサジのBECCSプロジェクトは、ベラ(Verra)またはアイソメトリック(Isometric)等の主要レジストリ(登録簿)での認証取得が視野に入っており、欧州の大手企業による長期購入契約(プレパーチェス)の対象ともなっている。今回の両社による産業CCS展開加速が、将来的な除去系カーボンクレジットの供給拡大にも直結することは間違いない。
日本の重工業・化学・鉄鋼・セメント各セクターにとって、HPC技術を用いた産業規模CSSの「ワンストップ調達」モデルの登場は、GX-ETSにおける炭素回収・貯留(CCS)活用の実現可能性を大幅に高める可能性を持つ。
サイペムはすでに日本市場との接点を有するEPCプレイヤーであり、カプソルのHPC技術との組み合わせは、国内大型排出源がCCS導入を本格検討する際の有力な選択肢の一つとなり得る。ま
た、BECCSから生成される除去系カーボンクレジットはJ-クレジット制度の枠外にある国際ボランタリーカーボンクレジット市場向けとなるが、東京ガスやJERAなどエネルギー大手がネットゼロ達成に向けた高品質CDRクレジットの調達を模索するなか、国際CSSプロジェクトへの直接投資・共同開発という選択肢の検討が急務となっている。