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Tara JAMBIOブルーカーボン調査、3年目で海草に対象拡大ーJブルークレジット制度強化への布石となるか

2026.05.14 読了 約4分
Tara JAMBIOブルーカーボン調査、3年目で海草に対象拡大ーJブルークレジット制度強化への布石となるか
出典:一般社団法人タラ オセアン ジャパン

一般社団法人タラ オセアン ジャパンとJAMBIO(マリンバイオ共同推進機構)が共同で実施する「Tara JAMBIOブルーカーボンプロジェクト」が、3年目となる2026年5月から8月にかけて、調査対象を従来の海藻から海草へと拡大する。

長崎大学環東シナ海環境資源研究センター、東北大学浅虫海洋生物学教育研究センター、北海道大学北方圏フィールド科学センター厚岸臨海実験所の3拠点で調査・啓発活動を展開する。

本プロジェクトは2026年春のクラウドファンディングによる支援で継続が決定し、2027年までの調査計画推進が見込みとなっている。

プロジェクトの全体像

本プロジェクトは日本全国13か所以上を対象に、約4年間にわたり調査を行う国内でも大規模なブルーカーボン研究である。タラ オセアン ジャパンの公式発表によれば、各年次の構成は以下のとおりである。

1年目(2024年)は海藻を対象に九州大学天草臨海実験所、北海道大学厚岸臨海実験所、島根大学隠岐臨海実験所の3拠点で実施したほか、海草対象の調査を広島大学竹原ステーションで先行的に行った。

2年目(2025年)は海藻調査を7拠点に拡大し、筑波大学下田臨海実験センター、長崎大学(上五島)、高知大学、香川大学(小豆島)、新潟大学佐渡、北海道大学忍路、東北大学女川の協力で実施した。

そして3年目の今年は、対象を海草に切り替え、上記3拠点で実施する。

調査内容は、潜水・船舶調査を用いた炭素隔離過程の解明(光合成、有機物輸送、溶存態有機物、分解性、堆積物コア、CO2収支、堆積物DNA)と生物多様性の評価(葉上動物、環境DNA、遺伝的多様性、固着生物)の二本柱で構成される。タラ オセアン ジャパンは、ブルーカーボン生態系について「どの種類の海藻・海草が、どのようなメカニズムで炭素を隔離しているのかについては、未解明な部分が多く残されている」と明記しており、本プロジェクトはまさにこの科学的空白を埋める基礎研究と位置づけられる。

海草と海藻、クレジット品質要件における国際的な扱いの差

3年目の海草シフトは、ブルーカーボンクレジットの国際的な品質要件との関係で読み解くと、その戦略的意義が浮かび上がる。

国際的なブルーカーボン生態系の定義は、マングローブ、塩性湿地、海草藻場の3生態系に分類されている。海草は堆積物に根を張り、その堆積物自体が長期にわたり炭素を固定する構造を持つため、永続性の評価が相対的に確立しやすい。実際、ベラ(Verra)をはじめとする主要方法論も、海草藻場を含む沿岸湿地を中心に整備されてきた。

これに対し、海藻(ワカメ、コンブ、アオサ等のマクロアルジー)は、国際ボランタリーカーボンクレジット市場における方法論整備も遅れている。海藻バイオマスに固定された炭素が、枯死後にどの程度の割合で深海堆積物に到達して長期固定されるかをめぐる定量評価が確立しておらず、永続性とMRVの両面で品質要件を満たしにくいというのが現時点の国際的な評価である。

一方、日本のJブルークレジット制度(ジャパンブルーエコノミー技術研究組合運営)は、海草藻場のみならず海藻藻場の再生・保全プロジェクトも対象に含めている点で、国際慣行と比べて広範な認証範囲を採用している。これは藻場再生への国内インセンティブを早期に立ち上げる目的では合理的だが、国際的なブルーカーボンクレジット市場との接続を見据えた際の品質論争の火種となりうる位置づけにある。

啓発活動と市民参画

調査拠点では、ブルーカーボン生態系の重要性を伝える一般向け啓発活動も実施される。長崎では2026年6月6日に「海の森のヒミツを科学でひもとく!ブルーカーボン生態系を学ぼう」を開催し、小学3年生以上を対象に定員30名で受け付ける。浅虫では6月27日、厚岸では8月1日に同様の啓発イベントを予定している。

本プロジェクトの継続資金は、2023年冬および2026年春の2回にわたるクラウドファンディングで確保されており、市民資金が研究基盤を支える構造となっている。

3年目の海草シフトは、Jブルークレジット制度の科学的基盤強化に資する重要な布石と評価できる。

日本のブルーカーボンクレジット制度は、現状では海藻藻場まで対象に含めることで国際慣行よりも広い認証範囲を持つが、これは国際市場との接続を図る局面で品質論争を招きうる脆弱性を内包している。

海草藻場の炭素隔離メカニズムを潜水・船舶調査と堆積物コア分析によって科学的に解明する本プロジェクトの成果は、国際的に評価されやすい海草藻場領域における日本独自のデータベースを構築するものであり、Jブルークレジット方法論のMRV高度化と国際整合性確保の双方に直結する。ただし研究継続が市民クラウドファンディングに依存している点は、産業界資金の本格的参画が不足している現状の裏返しでもある。

参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000021.000153009.html

カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。