ウェールズのグランドワー・フォレスト(Glandwr Forest)で2020年に始まった大規模フィールド実験の初期成果が公表された。土壌微生物の接種と岩石風化促進(ERW)という2つの自然由来的な介入を単独および組み合わせで検証した結果、若齢の広葉樹林で植林初期段階の炭素貯蔵量が最大27%増加した。
研究はインペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)とザ・カーボン・コミュニティ(The Carbon Community)が主導し、ロイヤル・ボタニック・ガーデンズ、キュー(Royal Botanic Gardens, Kew)、シェフィールド大学(University of Sheffield)、ETHチューリッヒ(ETH Zürich)が設計に参加した。72の試験区に25,000本超を植林し、うち6,400本を個体追跡する体制を敷いている。運営するザ・カーボン・コミュニティによれば、同種のフィールド実験としては世界最大規模だという。
実験は広葉樹林(バーチ、アルダー、チェリー、オーク、アスペン、ロワン)と針葉樹林(シトカスプルース)の2種類の林分を対象とし、放置区画による自然再生の対照区も設けた。土壌微生物処理は近隣の成熟林から採取した微生物・菌根菌群集を導入するもので、岩石風化促進は玄武岩の粉砕物を土壌に散布し、風化過程でCO2を吸収させる手法である。玄武岩は2020年の植林前と2023年の2回にわたって施用された。
ただし、27%という数値の内訳には注意が必要である。
原文の発表資料は微生物処理と岩石風化促進を組み合わせた効果として13〜27%という幅で記載しており、岩石風化促進単体の寄与がどの程度かは明示していない。一方で他媒体の報道では、27%を岩石風化促進単体による地上部炭素貯蔵の増加として扱っている例もあり、単体効果か複合効果かの切り分けは公表資料の間でも一致していない。学術論文はResearch Square上のプレプリント段階にあり、正式な査読誌への掲載は確認できていない。
本実験はスウォンジー大学(Swansea University)と市民科学ボランティアが参加する測定・報告・検証(MRV)の枠組み構築も兼ねており、地上での個体計測とドローン計測の相関を検証している。72試験区は8区画×8反復のブロックデザインで構成され、各植林区画400本のうち100本を個体タグで追跡する。今後5年間、地上部と地下部の炭素貯蔵量を継続測定する計画である。
本件はNbS系CDRのMRV精度を底上げする実証研究として位置づけられる。除去系カーボンクレジットの品質評価において、永続性や追加性の検証は個別プロジェクトの自己申告に依存しがちであり、本実験のような大規模かつ長期の第三者計測データは、その裏付けとして参照価値を持つ。ただし、27%という数値が単体効果か複合効果かで公表資料間の記述が一致していない点は、成果を引用する際に注意を要する。査読前の段階であることも踏まえ、正式発表を待って評価を確定させるべき事案である。