中国発のバイオ炭生産技術プロバイダーであるベストングループ(Beston Group)と、ボリビアを拠点に世界最大級のバイオ炭由来CDR(炭素除去)クレジット供給体制を構築するエクソマッドグリーン(Exomad Green)は、戦略的パートナーシップの第2フェーズ開始を発表した。
両社の協業はすでに第1フェーズで実績を積み重ねており、第2フェーズではさらに大規模な産業設備の追加投入により、南米市場におけるバイオ炭由来カーボンクレジットの供給リーダーシップを確立する狙いがある。
第1フェーズではベストングループがエクソマッドグリーンに対し、製材所から発生する木質廃材をバイオ炭へと変換する産業用熱分解装置「BST-50」を7基供給し、ボリビア国内で稼働させてきた。
第2フェーズでは新たに8基のBST-50が出荷準備を完了しており、両社が設置を進める産業規模システムは合計15基に到達する見込みである。この設備拡張は、エクソマッドグリーンが掲げる「2027年までに年間100万トンのCO2隔離を達成する」という目標に直結する重要な布石となる。
ベストングループはプロアース(Puro.earth)の公式技術プロバイダーであるとともに、アイソメトリック(Isometric)にとって初のバイオ炭設備パートナーとして認定されている。アイソメトリックによるBST-50の事前認証(pre-approval)は2026年2月に取得済みで、新規プロジェクトの検証プロセスを大幅に短縮する基盤となっている。
エクソマッドグリーンは、ボリビア国内に複数のバイオ炭生産拠点を展開しており、その一部はすでに本格稼働している。同社のバイオ炭由来CDR事業は、プロアース基準のもとで30万件のCO2除去証書(CORCs:CO2 Removal Certificates)を発行するという業界マイルストーンを達成しており、実際に納品済みの耐久性CDRカーボンクレジットの世界最大供給者としての地位を確立している。
この実績は数々の大型コーポレート契約を呼び込んでおり、特にマイクロソフト(Microsoft)との124万トン規模のCDRオフテイク契約は、バイオ炭分野における史上最大規模の契約として注目を集めた。耐久性のあるCDRカーボンクレジットの調達競争が激化するなか、エクソマッドが供給能力で先行している構図が鮮明になっている。
なお原文の表記には「Bestong Group」という誤記が散見されるが、正式名称は「Beston Group(ベストングループ)」であり、本記事では正式名称に統一している。
両社の協業のなかでも特に注目されているのが、ボリビア・グアラヨス地域における世界最大規模のバイオ炭生産施設の建設プロジェクトである。
このプロジェクトは段階的に立ち上げられる計画で、第1フェーズ(2026年中頃稼働予定)では年間16万トンのCO2除去を実現し、第2フェーズではさらに能力を倍増させ、年間32万トンのCO2除去を目指す。バイオ炭は、熱分解により炭素を安定的な固体形態に変換することで、数百年単位の永続性が見込まれる除去系(自然由来)の炭素除去ソリューションとして国際的な評価が高まっている。
加えてエクソマッドグリーンは「ソーシャル・ファースト」モデルを掲げ、生産したバイオ炭をボリビアの先住民農業コミュニティに無償で提供することで、土壌肥沃度の改善と食料安全保障に貢献している。これは追加性とコベネフィット(Co-benefit)の両面で評価される取り組みであり、グリーンウォッシング批判が強まるボランタリーカーボンクレジット市場において、品質シグナルとして機能する可能性がある。
マイクロソフトによる124万トン規模のオフテイク契約に象徴される通り、ビッグテックを中心とした「耐久性のある除去系カーボンクレジット」の長期調達競争はすでに加速段階にある。日本の大手排出企業も、ネットゼロ達成に向けた残余排出量への対応として、信頼性の高い除去系カーボンクレジットの中長期オフテイク戦略を早期に検討する必要がある。
また、ベストングループとエクソマッドグリーンの事例は、「設備プロバイダー × 現地オペレーター × レジストリ事前認証」の三位一体モデルがバイオ炭スケールアップの標準形となりつつあることを示している。日本国内でもJ-クレジット制度におけるバイオ炭農地施用の方法論が整備されつつあるが、世界市場で通用する規模感とMRV(測定・報告・検証)品質に追いつくには、技術提携・資本提携を含む積極的なグローバル展開が不可欠である。
最後に、ボリビアの先住民コミュニティへの無償提供という「ソーシャル・ファースト」設計は、TNFDやCSRDなど自然・社会関連開示が強化されるなか、コベネフィット定量化の観点から日本企業のサプライヤー評価基準にも組み込まれていく可能性が高い。単なる炭素量だけでなく、社会的インパクトを含めたカーボンクレジットの「品質ストーリー」が今後の調達意思決定を左右するだろう。