サステーラ(Sustaera) は2026年3月9日、自社の独自電熱式直接空気回収(DAC) 技術が運転効率90%超を達成し、既存の熱式DAC技術と比較して3〜4倍高い効率と3〜5倍低い資本コスト(CapEx)を実証したと発表した。長らくコスト高と未達の実績に苦しんできたDAC業界にとって、炭素除去(CDR)の「聖杯」とされる「100ドル(約1万5,500円)/トン未満」の閾値 に現実的な道筋を示した格好だ。
ノースカロライナ州リサーチ・トライアングル・パークに拠点を置くサステーラは、ナノ構造吸着剤と統合型電気加熱を組み合わせた独自の電熱式アプローチを採用する。同社CTOのコーリー・サンダーソン(Cory Sanderson) は、「熱式技術の効率は約40%が頭打ちだが、当社は最近90%超を達成した。従来の熱式アプローチよりはるかに少ない資本で実現でき、なおイノベーションを続けている」とコメントしている。
サステーラは今回の進展を「第3世代DAC」の幕開けと位置付けている。
100ドル/トン未満という水準は、CDR市場の本格的な普及に不可欠とされてきたベンチマークだ。サステーラの技術が同水準を実現すれば、DACは現在勢いを増している バイオ炭などの他のCDR手法との価格競争に再び乗ることが可能 になる。
これまでDACは、既存事業者がコミット済みのカーボンクレジット のうちごく一部しか実際に引き渡せていないという構造的問題を抱えてきた。今回の効率実証と、新たに導入した技術ライセンス供与モデルの組み合わせは、こうした履行リスクの低減にも寄与するとされる。
サステーラはこれまでストライプ(Stripe) やショッピファイ(Shopify) といった主要なカーボンリムーバル購入者と協業してきた実績を持ち、現在は主要なCDRデベロッパーとも交渉が進展している段階にあると説明している。
サステーラCEOのベン・ガードナー(Ben Gardner) は、「デベロッパーは、隔離目的でも利用目的でも、コスト効率よく炭素を回収できるようになる。技術はシンプルで、測定可能な成果を出し、スケールも容易だ。グリッド接続なしでも展開できる可能性がある」と述べている。
特筆すべきは、同社のDACシステムが水を一切使用せず、副産物として純水を生成する 点である。これは水ストレスの高い地域での展開可能性を大きく広げる特徴であり、中東や乾燥帯でのプロジェクトへの応用が期待される。
サステーラは、米エネルギー省(DOE)、カーボンリムーバル分野のXPRIZE、ブレークスルー・エナジー・ベンチャーズ(Breakthrough Energy Ventures, BEV)、グランサム・トラスト傘下のNeglected Climate Opportunities(NGO)、ロッキーマウンテン研究所(RMI)のアクセラレータ「サード・デリバティブ(Third Derivative)」から支援を受けている。同社は2040年までにCO2を5億トン除去することを目標に掲げ、1,000億ドル(約15.5兆円)超 とされる将来のカーボンリムーバル市場で相応のシェア獲得を狙う。
DACのコスト構造改善は、日本企業にとってScope 1・2・3排出のうちハード・トゥ・アベイト領域の残余排出処理コスト を直接左右する論点である。除去系カーボンクレジットの調達価格が100ドル/トン台に近づけば、ネットゼロ目標達成のロードマップにおけるCDR組み込みの経済合理性が一段階上がる。
特に、商社・電力・素材産業を中心に進む長期オフテイク契約の交渉において、DACは依然として「価格未定の戦略オプション」の位置付けにとどまっているが、サステーラのような第3世代技術が量産フェーズに入れば、プレパーチェスカーボンクレジット契約の価格交渉力学が変わる 可能性がある。
参考:https://www.globenewswire.com/news-release/2026/03/09/3251955/0/en/dac-breakthrough-unlocks-3x-cheaper-carbon-removal-projects.html