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Google、カリフォルニア州ベイエリアで湿地修復によるCDR研究プロジェクトを開始 ブルーカーボンの定量化手法の確立を目指す

2026.04.21 読了 約4分
Google、カリフォルニア州ベイエリアで湿地修復によるCDR研究プロジェクトを開始 ブルーカーボンの定量化手法の確立を目指す
出典:イメージ

グーグル(Google)は2026年4月14日、カリフォルニア州ベイエリアにおいて、劣化した塩田を潮間帯湿地として再生し、同時に炭素除去(CDR)の科学的知見の高度化を目的とした新たなプロジェクトを開始すると発表した。

同プロジェクトは、グーグルのマウンテンビュー本社に隣接する湿地帯を対象としており、自社の事業拠点周辺で自然に基づく解決策(NbS)としての湿地修復を実証・研究する点で象徴的な意味を持つ。

ベイエリアの「A1池」を再生、大規模修復プロジェクトと連携

プロジェクトの主たる対象は、マウンテンビュー本社近郊に位置する「A1池(Pond A1)」と呼ばれる旧塩田である。100年以上にわたり、ベイエリア一帯では塩生産活動によって本来の潮間帯湿地が産業用塩田へと置き換えられ、水質悪化と生物多様性の喪失を招いてきた。

グーグルは今回、米国西海岸最大規模の潮間帯湿地修復イニシアチブである「サウスベイ・ソルトポンド修復プロジェクト(South Bay Salt Pond Restoration Project)」、および湿地・水鳥保全分野で長い実績を持つ非営利団体「ダックス・アンリミテッド(Ducks Unlimited)」と連携し、A1池の修復に取り組む。

サウスベイ・ソルトポンド修復プロジェクトは完工時に合計15,100エーカー(約61平方キロメートル)の旧塩田を潮間帯湿地および関連生態系に再生することを目標としており、グーグルの今回の参画は同イニシアチブの一翼を担う形となる。

「リビング・ラボラトリー」としての位置付け、CDR定量化手法の高度化が狙い

注目すべきは、本プロジェクトが単なる湿地修復事業ではなく、CDRの科学的定量化を加速する「リビング・ラボラトリー(生きた実験場)」として位置付けられている点である。グーグルはカリフォルニア州内の研究機関と連携し、湿地修復によるCO2隔離効果を**測定・報告・検証(MRV)**の観点から定量化する新たな手法の探索・実証を進める方針を示している。

炭素除去プログラム責任者のランディ・スポック(Randy Spock)氏は、ブログ投稿のなかで「本投資は、地域の生態系を再生しつつ炭素を隔離し、世界の気候研究に貢献するという、当社の環境スチュワードシップへのコミットメントを反映するものである」と述べた。

ブルーカーボン領域における大手テック企業の動向

潮間帯湿地は、マングローブ林・海草藻場と並んでブルーカーボン生態系を構成する代表的な要素であり、面積あたりのCO2隔離能力が高いことが知られている。一方で、その隔離量の定量化、永続性の評価、追加性の証明には依然として方法論上の課題が残っており、ボランタリーカーボンクレジット市場における自然由来カーボンクレジットの中でも、ブルーカーボン領域の方法論整備は発展途上にある。

グーグルは既に、シンビオシス連合(Symbiosis Coalition)への参画を通じて、メタ(Meta)、マッキンゼー(McKinsey)等とともに自然由来CDRカーボンクレジットの大規模調達枠組みを推進している。同連合は植林(ARR)系プロジェクトを中心に高品質な自然由来カーボンクレジットの需要を集約しているが、今回のA1池プロジェクトは、グーグル単独でブルーカーボン領域における方法論開発に直接関与する点で戦略的な意味合いが異なる。

カーボンクレジット市場への含意

本プロジェクトはグーグルの自社オフセット用カーボンクレジット創出を直接の目的としていないものの、研究成果が確立されれば、潮間帯湿地修復に係るCDRカーボンクレジットの方法論として、ベラ(Verra)、ゴールドスタンダード(Gold Standard)、プロアース(Puro.earth)など主要レジストリへの実装可能性が広がる。とりわけ、自然由来CDRカーボンクレジットのMRV信頼性は、市場全体の品質懸念やグリーンウォッシング批判への対応上、最も重要な論点の一つとなっており、ビッグテック主導の科学的検証プロジェクトは市場形成に一定の影響を与えうる。

日本では国土交通省とジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE)が運営するJブルークレジット制度が、海草藻場・藻場・干潟等を対象としたブルーカーボン由来カーボンクレジットの認証を進めている。グーグルが取り組む潮間帯湿地のMRV高度化は、Jブルークレジット制度における方法論精緻化や、将来的な国際整合性確保の観点で重要な参照事例となりうる。

また、自社拠点近隣で自然由来CDRに直接関与するアプローチは、日本企業のカーボンインセッティング戦略(自社バリューチェーン内での炭素除去)にも示唆を与える。事業所周辺の自然資本に直接投資する方式は、TNFD開示や生物多様性クレジットとの統合的なナラティブ構築にも有効に機能するだろう。

参考:https://blog.google/company-news/outreach-and-initiatives/sustainability/wetland-restoration-carbon-removal/

関連タグ ブルーカーボン
カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。