カナダ・バンクーバーに本社を置くスバンテ・テクノロジーズ(Svante Technologies Inc.)は2026年3月10日、米南東部の製紙工場におけるバイオエネルギー炭素回収・貯留(BECCS)プロジェクトがフィージビリティスタディ(実行可能性調査)段階に移行したことを発表した。
同プロジェクトは、統合型パッケージング企業との共同開発であり、同パートナーが保有する複数の工場を対象としたスクリーニングおよびプレフィージビリティ評価を経て、今回の段階に到達したものである。
本プロジェクトは、製紙工場の回収ボイラーから排出されるバイオジェニックCO2を年間50万トン超回収し、恒久的に地中貯留する設計である。工場で使用されるバイオマス繊維は持続可能な方法で管理された森林から調達されており、回収したCO2を貯留することで炭素除去(CDR)クレジットの生成が可能となる。
生成されるCDRクレジットは、確立された測定・報告・検証(MRV)基準を満たし、ボランタリーカーボンクレジット市場での販売を想定している。購入対象として、Scope1およびScope2排出への対応を目指す企業が念頭に置かれている。
フィージビリティスタディでは、詳細なエンジニアリング・設計作業に加え、コスト見積もり、スケジュール分析、リスク評価を実施し、将来のエンジニアリングスタディおよび最終投資決定(FID)に向けた商業的実行可能性を評価する。スバンテの子会社であるスバンテ・デベロップメント(Svante Development Inc.)が、工場オーナーとともに本フェーズへの共同投資を行う。
スバンテ・デベロップメントのスコット・ガードナー(Scott Gardner)社長は、本調査によりコスト、プロジェクト実行戦略、プラント統合要件の評価に必要な情報が得られると述べ、同地域におけるCO2貯留インフラの進展とも整合するとの見解を示した。
本プロジェクトでは、スバンテ独自の固体吸着剤型炭素回収技術が採用される。同技術は、ナノエンジニアリングされたフィルターをコーティングしたロータリーコンタクターマシンを用い、燃焼後の産業排ガスからCO2を選択的に回収する仕組みである。
回収されたCO2は、米ガルフコースト地域での恒久的な地中貯留が計画されている。同地域にはクラスVI注入井の規制枠組みおよび適切な地下構造が整備されており、長期貯留に適した条件を備えている。さらに、プロジェクト設計には廃熱・水回収システムが含まれ、回収プロセスに伴う追加的なエネルギーおよび水の需要の低減が図られている。
本プロジェクトは、スバンテがパルプ・製紙セクターで展開するBECCS開発戦略の一環である。同セクターではバイオマス加工から生じるバイオジェニック排出が大規模な炭素除去(CDR)の機会を提供しており、BECCSはそのスケーラブルな経路として位置づけられている。
製紙業由来のバイオジェニック排出を活用したBECCSは、高耐久性CDRクレジットの供給源として注目度が高まっている。日本においても、大手製紙企業が森林資源を基盤としたバイオマスエネルギーを活用しており、同様のBECCSスキームとの親和性は高い。
GX-ETSフェーズ2における除去系クレジットの位置づけや、Scope1・2対応としてのCDRクレジット調達戦略を検討する日本企業にとって、本プロジェクトの技術・商業両面での進展は重要な先行事例となるであろう。
参考:https://www.climefi.com/blog-posts/carbon-removal-registries-pathways-projects-2026