グーグル(Google)、マッキンゼー(McKinsey)、メタ(Meta)の3社は2026年3月、米国の自然由来カーボンクレジット開発企業リビングカーボン(Living Carbon)とオフテイク契約を締結した。
シンビオシス・コアリション(Symbiosis Coalition)の共同購買スキームを通じたこの契約により、3社は10年間にわたり合計13万1,240トンの炭素除去(CDR)カーボンクレジットを調達する。
プロジェクトの舞台は、米国アッパラチア地方に広がる炭鉱跡地と放棄農地だ。米国全土に点在する廃坑地は約160万エーカー(約647,000ヘクタール)に及び、土壌劣化・浸食・有害金属汚染・外来種の侵入により自然再生が阻まれている。特にセントラル・アパラチア地域は数十年にわたる石炭採掘の影響を受けており、再生の優先度が高い対象地とされている。
リビングカーボンは同地域において、在来種の広葉樹とマツを植栽し、戦略的植林(ARR)・集中的な地盤整備・外来種管理を組み合わせることで自然再生を支援する。同社によれば、このアプローチにより在来植生と野生動物の生息地を回復させるほか、土壌・水質の改善といったコベネフィット(Co-benefit)も創出される。
土地所有者はリビングカーボンとのリース契約によって従前は遊休状態だった土地から収益を得られ、地域住民には雇用機会や、かつて採掘に使用されていた機材の生態系回復への転用支援が提供される。
本プロジェクトはシンビオシス案件としては初めてアイソメトリック(Isometric)のリフォレステーション・プロトコルに登録される。アイソメトリックは自然由来の炭素除去(CDR)分野で高い整合性を誇る検証機関として注目されており、初適用となる今回の案件は市場全体の品質基準形成においても象徴的な意義を持つ。なお最初のカーボンクレジット発行は2028年8月が見込まれている。
グーグルが50,000トンを契約したことが確認されており、残余はマッキンゼーとメタが分担する。
シンビオシスは2030年までに2,000万トンの高品質な自然由来カーボンクレジットを調達するというアドバンス・マーケット・コミットメント(AMC)を掲げている。今回のリビングカーボンとの契約は、ブラジルの森林保護企業モンバク(Mombak)との第1弾に続く第2弾案件であり、共同RFPプロセスを通じて10年間で50万トン以上の除去を目指すフォレスト・RFPの一部を構成する。
シンビオシスはAMCの品質方針として、追加性を担保するダイナミック・ベースライン手法、リーケージへの堅牢なアプローチ、長期的な永続性の確保を重視しており、リビングカーボンはこれらの要件を満たすプロジェクトとして選定された。
日本企業にとって注目すべき点は、シンビオシスの共同RFPモデルが「高品質な自然由来カーボンクレジット」の調達基準を事実上業界標準として押し上げていることにある。アイソメトリックのプロトコル採用やダイナミック・ベースラインの義務化は、VCM全体における追加性・永続性の評価水準を引き上げる動きであり、J-クレジット制度や二国間クレジット制度(JCM)の文脈でも同様の高度化圧力が今後強まるとみられる。国内サプライヤーやVCM参入を検討する企業は、このグローバルな品質基準動向を自社の調達・販売戦略に組み込むべき段階に入っている。
参考:https://www.symbiosiscoalition.org/perspectives/launch-press-release