シンビオシス・コアリション(Symbiosis Coalition)は2026年3月31日、自然由来の高品質な炭素除去(CDR)を対象とした第2回提案依頼(RFP)を正式に公開した。
今回のRFPは既存の再植林・アグロフォレストリー案件に加え、マングローブ再生事業を新たに対象として取り込み、ブルーカーボンクレジット領域へ初めて踏み出す内容となっている。
シンビオシスは2024年に設立された2,000万トン規模のアドバンス・マーケット・コミットメント(AMC)であり、2030年に向けて次世代の自然由来CDRプロジェクトへの長期的な購買確約を通じて市場を下支えする枠組みだ。参加メンバーにはGoogle、Meta、Microsoft、マッキンゼー(McKinsey)、セールスフォース(Salesforce)、ベイン・アンド・カンパニー(Bain & Company)、REIコープ(REI Co-op)など国際的な大企業が名を連ねる。
第2回RFPはローリング方式(随時受付)を採用し、案件がシンビオシスの基準を満たし次第、固定された応募期限によらず申請できる。これは第1回RFPの固定期間方式から大幅に改善された点だ。
マングローブは陸上森林と比較して単位面積当たり最大10倍の炭素を隔離できる生態系であるにもかかわらず、高品質なマングローブ由来カーボンクレジット市場はいまだ黎明期にある。シンビオシスは今回のRFPを通じて、近い将来における高品質CDRへの需要を可視化し、より広範な市場形成の基盤を整える狙いを持つ。
マングローブ案件に限り、最大100万トン分のプレパーチェスカーボンクレジット(先買い)のパイロットトラックも新設されており、開発初期段階のプロジェクトに対する前払い資金提供の仕組みを試験的に導入する。
今回のRFPに応募可能なプロジェクト(再植林・アグロフォレストリー・マングローブ)の主な要件は以下の通りだ。
最低要件
優先評価項目
シンビオシスは、自然に基づく解決策(NbS)が回避排出と炭素除去の両方をもたらすことを認めつつ、コミットメントの2,000万トン目標に計上されるのは除去分のみであることを明確にしている。マングローブについては回復事業・混合事業の両形態を受け入れる。
シンビオシスは今年初め、マングローブを含む全生態系に適用される品質基準(Quality Criteria)を改訂した。堅牢なベースライン、信頼性の高い追加性、耐久性のある炭素貯留、強固な社会的・生態的セーフガードという核心要素は生態系を問わず共通とし、科学的知見に基づく生態系固有のガイダンスを追記した構造となっている。
2024年12月に開始した第1回RFPでは、これまでにモンバック(Mombak)によるブラジルアマゾンの劣化牧草地における大規模再植林案件、およびリビング・カーボン(Living Carbon)による米国アパラチア地方の旧炭鉱・農地での再植林案件(13万1,240トン)の2案件が正式発表された。
第2回RFPに向けた改善点は以下の3点だ。
RFPの受付・スクリーニングはアバタブル(Abatable)がプラットフォームとして担当する。プロジェクト精査には、カーボン・ダイレクト(Carbon Direct)、ジルバ(Xilva)に加え、今回新たにシルベストラム(Silvestrum)、テラカーボン(TerraCarbon)、ビーゼロ・カーボン(BeZero Carbon)が参画する。地理空間分析にはスペース・インテリジェンス(Space Intelligence)の技術を活用し、土地適格性・非永続性リスク・リーケージリスク・ダイナミックベースラインの整合性を検証する。
マングローブを対象に加えた今回のRFPは、ブルーカーボンクレジット市場の制度的成熟を後押しする重要な一手だ。
日本国内では環境省が推進するJブルークレジットが先行するものの、国際的な高品質基準(ICVCM認証)との整合性という観点では課題も残る。
Scope 3排出量削減の選択肢として自然由来CDRへの需要を高める日本企業にとって、シンビオシスの品質基準、特に追加性・永続性・ダイナミックベースラインの厳格な運用は、国内クレジット調達の比較軸として参照すべき国際標準になりつつある。