最新ニュース
海外ニュース

ACR、CCS方法論v2.0公表 DAC・BECCS等を新規対象化、米国CCSクレジット創出パイプラインの本格化に対応

2026.05.10 読了 約4分
ACR、CCS方法論v2.0公表 DAC・BECCS等を新規対象化、米国CCSクレジット創出パイプラインの本格化に対応
出典:<a href="https://acrcarbon.org/methodology/carbon-capture-and-storage-projects/" target="_blank">Acrcarbon</a>

米国のカーボンクレジット登録機関ACRは2026年5月7日、炭素回収・貯留(CCS)プロジェクト向け方法論を「v2.0」へと改訂し公表した。

貯留先・対象範囲の同時拡張

旧版(v1.0/v1.1)が実質的にCO2を石油増進回収(EOR)に注入する案件のみを対象としていたのに対し、v2.0は貯留先として塩水帯水層(saline aquifer)および枯渇油ガス田を新たに認め、対象となる地理的範囲と地中貯留容量を大幅に拡大した。

対象排出源についても、化石燃料起源CO2に加え、生物起源CO2、DACBECCSBiCRS(生物起源炭素除去・貯留)を包含する設計となった。従来の「排出回避型CCS方法論」から「除去(removal)系を統合したハイブリッド方法論」への構造転換である。

モニタリング・検証要件はEPAのClass VI地中貯留規則と整合させ、所管・許認可種別に関わらず長期的CO2閉じ込めを実証する測定・報告・検証(MRV)計画の策定を義務化したとACRは説明している。同社のメアリー・ジェーン・クームズ(Mary Jane Coombs)産業プログラム担当ディレクターは「セメントや鉄鋼など脱炭素化が困難なセクターからの排出削減手段として、CCSは実用的かつ高インテグリティな選択肢となる」とコメントした。

米国の水面下で蓄積していたクレジット創出パイプライン

今回の改訂は、米国においてCCSの物理インフラ・資金・政策の三層パイプラインが急膨張する一方、ボランタリーカーボンクレジット市場側の制度枠組みが追いついていなかった現状への応答と読み取れる。

第一の圧力要因はEPA Class VI井戸(CO2地中貯留専用井戸)申請の積み上がりである。EPAは現時点で130件超のClass VI許可申請を審査中で、テキサス州内だけで18件超が係属する。テキサス、ルイジアナ、ノースダコタ、ワイオミング、ウェストバージニア、アリゾナの6州がすでにClass VIプライマシー(州権限委譲)を取得し、特にテキサスは2026年12月15日のプライマシー発効を経て、2年以内に25件の許可発行を目標に掲げる。

第二の要因は45Q税額控除の強化である。2025年7月成立の連邦税法改正(One Big Beautiful Bill)により、CCS(EORを含む)およびDACに対する45Q水準が引き上げられた。控除額は1トンあたり17〜180ドル(約2,700〜28,300円)とプロジェクト類型で異なるが、CCS/DAC投資の回収予見性は明確に向上している。

第三の要因は先渡しオフテイク市場の急膨張である。シルベラ(Sylvera)の集計によれば、2025年の高耐久性除去系カーボンクレジットのオフテイク契約総額は123億ドル(約1兆9,300億円)に達し、2024年の39.5億ドル(約6,200億円)から3倍超に急拡大した。地中貯留型CDRはその主要対象であり、買い手側の長期コミットメントが先行している。

物理・資金・政策の三層パイプラインが同時拡張する一方、肝心のボランタリーカーボンクレジット創出方法論(ACR v1.0/v1.1)はEOR限定で、ICVCMのアセスメント文書によれば両バージョンともクレジット発行実績はゼロという状態が続いていた。v2.0は、この構造的ミスマッチに対する登録機関側の応答である。

EOR扱いの差分と品質側の論点

ACR公式の方法論概要によれば、EOR向けクレジット発行には段階的廃止条項(sunset on eligibility)が組み込まれている。短期的には継続するが、将来的に縮小・終了が予定された設計であり、生産・輸送・精製・最終消費段階の排出計上要件の厳格化と並行して退出経路を用意した構造である。EOR由来カーボンクレジットの環境十全性を巡る長年の批判への一定の応答と読める。

一方で、排出回避型CCSと除去系CDR(DACBECCSBiCRS)を単一方法論で扱う設計には、両者の品質要件・耐久性プロファイルが本質的に異なるため、買い手側でのカーボンクレジット品質シグナルが希薄化するとの懸念もある。プロアース(Puro.earth)やアイソメトリック(Isometric)といった除去系特化レジストリとの差別化は、結局のところ買い手側の判別能力に委ねられる構図が残る。

参考:https://acrcarbon.org/methodology/carbon-capture-and-storage-projects/

関連タグ CCS DAC 北米
カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。