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ベラ、REDD+方法論VM0048の運用本格化へ 森林減少リスクマップ作成委託先3社と5年契約

2026.05.10 読了 約5分
ベラ、REDD+方法論VM0048の運用本格化へ 森林減少リスクマップ作成委託先3社と5年契約
出典:イメージ

カーボンクレジット認証機関のベラ(Verra)は2026年5月7日、REDD+方法論VM0048および付随モジュールVMD0055のもとで森林減少リスクマップ等を作成するデータサービスプロバイダー(DSP)として、アグレスタ(Agresta)、スペース・インテリジェンス(Space Intelligence)、テラカーボン(TerraCarbon)とクラーク大学(Clark University)地理空間分析センター(Center for Geospatial Analytics、CGA)のコンソーシアムの3社を選定したと発表した。

契約期間は5年間の非排他的長期契約で、6管轄区域から作業を開始する。

VM0048は計画外森林減少回避(Avoided Unplanned Deforestation、AUD)等を対象とするVCS方法論であり、プロジェクト個別ではなく管轄区域単位でベースラインを集中設定する仕組みを採用した点に最大の特徴がある。

今回のDSP選定は、この管轄区域ベースアプローチの運用基盤整備に位置づけられる。

選定された3社と対象6管轄区域

3社のDSPは、活動データ(AD)、森林被覆基準マップ(FCBM)、配分済み森林減少リスクマップを作成する。プロジェクト開発者はこのリスクマップに基づき、自プロジェクトのベースラインを設定する。

第一弾として割り当てられた管轄区域は次の6地域である。

リスクマップのみ作成する地域(活動データ・基準マップは整備済み)

  • アルゼンチン:アグレスタ
  • フィリピン:スペース・インテリジェンス
  • パプアニューギニア:テラカーボン+CGA

マッピング全工程を担当する地域

  • コンゴ民主共和国エクアトゥール州:アグレスタ
  • ブラジル・マットグロッソ州(第2基準有効期間):スペース・インテリジェンス
  • ブラジル・パラ州(第2基準有効期間):テラカーボン+CGA

ベラとDSPは、プロジェクト開発者から徴収するプロジェクト活動データ配分料金(PADA)を分配する仕組みとなる。今後、追加の管轄区域も順次割り当てられる予定である。

VM0048刷新の文脈、「設計」から「実装」へ

VM0048は2023年11月に承認された新世代REDD+方法論であり、それ以前のプロジェクト個別ベースラインを巡る過大クレジット発行批判への構造的回答として導入された経緯を持つ。プロジェクト開発者が独自にカウンターファクチュアル(仮想シナリオ)を設定する従来方式から、第三者がトップダウンで管轄区域単位のベースラインを設定する方式へと根本的に転換した点で、REDD+方法論史における大きな分水嶺と評価されてきた。

ただし、新方法論の設計上の優位性と運用上の実装可能性は別問題である。発表から運用フェーズ移行までの期間、ベースライン設定に必要な管轄区域データの整備が市場のボトルネックとなり、プロジェクト開発の停滞を懸念する声が出ていた。今回の3社選定は、このデータ整備プロセスをDSPとの長期契約により標準化・加速化する措置である。

ベラは選定3社について、高品質な森林被覆データ・変化データの開発実績を理由に挙げ、VMD0055が要求する厳格な要件を満たすマップを期日通りに供給可能と判断したとしている。

集中化アプローチをめぐる論点

ベラのアプローチは、データ品質の標準化と運用効率化の観点では明確な利点を持つ。一方で、リスクマップ作成の主要担い手を3社に集約する構造は、新たなゲートキーパー化リスクを内包するという指摘もある。プロジェクトベースラインの妥当性が、実質的に少数の地理空間分析事業者の判断に依存することになるためである。

加えて、ホスト国主権との関係も論点である。ベラはこの点について、自社のリスクマップ作成は政府が国連気候変動枠組条約(UNFCCC)に提出する森林参照排出レベル(FREL)を代替・否定するものではないと明示し、可能な限り公式データを使用し、最終リスクマップを関連政府機関と共有するとしている。とはいえ、ホスト国のFRELとベラ管轄区域ベースラインが乖離する場合の取り扱いは、パリ協定6条のもとでの相当調整議論ともリンクしうる潜在的論点として残る。

国際的なREDDクレジット信頼回復の文脈

REDD+カーボンクレジットを巡っては、2023年の主要メディアによる過大発行報道以降、ボランタリーカーボンクレジット市場で買い手の慎重姿勢が続いてきた。ベラ自身もこの間、中国REDDプロジェクトの一時保留措置(直近で解除)など、案件審査の厳格化を進めてきた経緯がある。

VM0048の運用基盤整備は、こうした信頼回復プロセスにおける「方法論刷新→運用標準化→市場再供給」の3段ロケットの第2段にあたる動きと位置づけられる。次の焦点は、ICVCMのコアカーボン原則(CCPs)審査においてVM0048が高評価を獲得できるかである。これが整えば、REDD+カーボンクレジットは「特定方法論バージョン以降のもの」として市場で選別評価される段階へと進む。

日本市場への含意

本件は短期的な調達判断材料というより、中長期的な自然由来カーボンクレジット市場の構造変化を読む材料である。VM0048経由で発行される回避系カーボンクレジットは、今後、国際移転対応クレジット(ITMO)としての利用適格性や、二国間クレジット制度(JCM)の森林分野方法論との比較対照軸としても重要性を増す可能性がある。

単なる委託先選定ではなく、REDD+カーボンクレジット市場が「批判への対応」フェーズから「方法論実装」フェーズに移行したことを示すマイルストーンと評価する。

参考:https://verra.org/verra-selects-data-service-providers-to-produce-redd-risk-maps/

関連タグ REDD+ Verra
カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。