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食品廃棄物由来の非加熱DAC吸着材、ETHがコスト構造への切り込みを狙う

2026.06.24 読了 約3分
食品廃棄物由来の非加熱DAC吸着材、ETHがコスト構造への切り込みを狙う
出典:イメージ

チューリッヒ工科大学(ETH Zürich、以下ETH)の研究チームが、乳業と豆腐製造の廃棄物を原料とするDAC吸着材を開発した。常温かつ少ないエネルギーでCO2を回収・脱離できる点が特徴で、成果は2026年6月8日付の米科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された。

DACの普及を阻んできた要因はエネルギー消費とコストである。今回の手法は、その双方の低減を狙う設計として提示されている。

廃棄物由来の吸着材と回収性能

研究を主導したのは、材料科学を専門とするラファエレ・メッツェンガ(Raffaele Mezzenga)教授のグループである。乳製品や豆腐の製造工程では大量のタンパク質を含む溶液が副産物として生じるが、その多くは廃棄されている。チームはこの廃棄物からタンパク質を分離し、アミロイド線維と呼ばれる繊維状の長鎖を形成。これに水酸化カリウムを担持させ、直径0.5〜1センチメートルのビーズに加工した。

ビーズを周囲の空気にさらすと、水酸化カリウムがCO2と反応して炭酸水素塩を生成し、空気中からCO2を取り除く。チームの試験では、材料1グラムあたり97ミリグラムのCO2を回収した。筆頭著者のジョウ・ドン(Zhou Dong)は、これを従来のDAC手法より10〜50%高い水準と説明する。1キログラムのビーズで、1サイクルあたり理論上100グラムのCO2を回収・分離できる計算になるという。

非加熱再生とコスト構造

従来のDACでコストを規定してきたのは、CO2を脱離させる再生工程のエネルギーと、吸着材の耐久性である。今回の手法は、この二点に同時に働きかける。

再生は常温で行う。ビーズに弱酸と弱塩基を約10分間交互に噴霧して化学結合を切り、CO2を分離する。加熱を伴わない非加熱プロセスであり、従来法が再生に要してきた熱エネルギーを不要にする。

酸・塩基・ビーズはいずれも再利用でき、ラボ試験では30サイクルにわたり顕著な性能劣化は確認されなかった。早期に劣化する合成系の吸着材と異なり、タンパク質ビーズは長期に安定するという。

スケーラビリティと残された課題

ただし、現時点の実証はラボスケールにとどまる。

今回扱われたのは数グラムのビーズで、回収・分離したCO2は約50グラムである。大規模化しても高い吸着性能が維持されるかは、検証課題として残る。メッツェンガ教授はスケーラビリティに自信を示し、CO2分離に用いる噴霧システムが既存の産業技術を基盤とする点を根拠に挙げる。アミロイド線維を20年近く扱い、プラスチック代替素材や水浄化技術にも応用してきた経歴が、その見通しを支える。

回収CO2の1トンあたりのコストはまだ精密に算定されていないが、同教授は従来のDACを大幅に下回ると見込む。少ないエネルギーで稼働し、広く入手可能な廃棄物を原料とすることが、その根拠である。

数千サイクル後は吸着能の低下で交換が必要になるが、ビーズは有機物のみで構成され生分解性を持つため、肥料やバイオ燃料へ転用できるとされる。

編集部の視点

今回の手法の意義は、DACのコストを規定してきた再生工程のエネルギーと吸着材の耐久性という二要因に、廃棄物由来かつ非加熱という単一の設計で同時に対処した点にある。量産規模での性能とコストが実証されていない現段階では、DACの経済性を塗り替える成果ではなく、そのコスト構造を素材設計の側から問い直す一事例として位置づけられる。

参考:https://ethz.ch/en/news-and-events/eth-news/news/2026/06/turning-food-waste-into-carbon-captors.html

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カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。