アフリカ・ソブリンカーボン・レジストリ財団(Africa Sovereign Carbon Registry Foundation、ASCR財団)は、UNDPジブチ事務所がオブザーバー兼戦略顧問として財団に参加したと発表した。UNDP側はアレッサンドラ・ロッカサルヴォ(Alessandra Roccasalvo)ジブチ常駐代表が代表を務める。
財団が推進するのは、個別のカーボンクレジット発行制度ではなく、汚染者負担原則に基づき航空・海運の国際的な排出者からカーボン拠出金(carbon contribution)を主権国家が直接徴収するモデルである。徴収した資金は各国の登録簿を通じて適応・脱炭素プログラムに充当される。
ジブチは2023年にアフリカで初めてこのソブリンカーボンイニシアチブを立ち上げ、財団によれば以降80件を超えるプログラムを支援してきたとされる。
財団のモデルはすでにガボンに広がっている。ガボンは大統領令によりソブリンカーボンイニシアチブを開始し、ASCR財団のガバナンス下で登録簿を設置した。2025年9月の第2回アフリカ気候サミットでは、アフリカ連合(AU)が財団を支持する立場を表明している。
今回のUNDPの参加は、こうした拡大局面に多国間機関の関与が加わったことを意味する。
ただし、UNDPの関与はオブザーバー兼戦略顧問という立場にとどまり、資金拠出や運営権限を伴うものではない。
このモデルは、国際海事機関(IMO)が検討する世界規模の海運課金構想と並走する位置にある。ジブチとガボンが適用する拠出金水準は1トンあたり約17ドル(約2,750円)であり、IMOが検討する約100ドル(約16,200円)の水準とは大きな開きがある。海運業界の団体からは、各国独自の拠出金徴収が乱立すれば規制が分断されるとの懸念が示されている。
財団は、登録簿が国際基準(GHGプロトコル、ISO 14064等)およびCORSIA・IMOの分野別基準に準拠し、独立した第三者監査・認証を組み込むことで整合性を担保すると説明する。カーボンオフセットはベラ(Verra)やゴールドスタンダード(Gold Standard)等で発行されたカーボンクレジットのリタイアメントを通じて行われ、ICVCMのコアカーボン原則(CCPs)への準拠を掲げる。
今回のUNDP参加は、ソブリンカーボン拠出金モデルが多国間機関の関与を取り付ける段階に入ったことを示す一里塚として位置づけられる。
もっとも、オブザーバー兼戦略顧問という関与形態は正統性の補強にとどまり、運営権限や資金の裏付けを伴わない。モデルがジブチからガボンへ、さらに他のアフリカ諸国へと拡大する局面で問われるのは、各国が独自に拠出金水準と対象範囲を定める設計のもとで、登録簿間の品質と整合性をどこまで均質に保てるかである。IMO構想との水準差と相まって、この均質化の度合いが、ソブリンモデルが分断要因と映るか、それともアフリカ主導の標準化された気候資金枠組みとして評価されるかを左右する。