JFEスチールは2026年3月23日、広島県福山市の港湾内に鉄鋼スラグ製品を活用して造成した干潟において、Jブルークレジットの認証を取得したと発表した。
認証を受けたのは2023年2月から2024年1月の1年間における炭素吸収量で、算定値は17.6トン(CO2換算)。本認証はJFEスチールにとって2件目のJブルークレジット取得であり、産業副産物の再生資源化を通じたブルーカーボンクレジット創出モデルとして注目される。
福山港内港はかつて、ヘドロの堆積に起因するスカム(水面浮遊汚泥)や悪臭が深刻な環境問題となっていた。これを解決するため、国立大学法人広島大学、中国電力株式会社、JFEスチール、福山市の4者が連携し、「福山港内港における再生資源による干潟づくり」プロジェクトを推進してきた。
干潟の造成に用いられた材料は、JFEスチールが開発した鉄鋼スラグ製品「マリンストーン®」および中国電力製の石炭灰造粒物。いずれも産業副産物(再生資源)を活用しており、新規資源の採掘を伴わない点が本プロジェクトの技術的特色である。
Jブルークレジット認証の根拠となる炭素吸収は、干潟部に着生した微細藻類のCO2固定機能に基づく。干潟の微細藻類は光合成によってCO2を吸収し、有機炭素として底質に蓄積する。この炭素フローを測定・報告・検証(MRV)の手続きに沿って定量化し、ジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE)が審査・認証した。
認証機関であるJBEは、国土交通省認可の技術研究組合であり、Jブルークレジットの発行・販売を統括している。ブルーカーボンを活用したカーボンクレジット創出の方法論開発においても国内の中核機関として位置づけられる。
本プロジェクトが特筆すべきは、炭素吸収量の認証にとどまらない多面的な環境効果、すなわちコベネフィット(Co-benefit)の発現である。施工後のモニタリングでは以下の変化が確認されている。
これらは、カーボンクレジットの観点では自然由来カーボンクレジットが有する生物多様性共便益の典型例であり、国際的なカーボンクレジット基準においても評価指標として重視される要素と整合する。
鉄鋼製造工程から排出されるスラグを海域底質改善材として活用し、そこからブルーカーボンクレジットを創出するというスキームは、鉄鋼業界固有のバリューチェーンとカーボンクレジット市場を接続する先駆的モデルである。
JFEスチールは今回の認証をもって同スキームの再現性と継続性を改めて示した。同社は今後も鉄鋼スラグを活用した藻場・干潟の創出と炭素吸収量算定を継続していく方針を示している。
本事例は、鉄鋼スラグという産業副産物をブルーカーボン吸収源として機能させることで、廃棄物処理コストの削減とJブルークレジットによる環境価値の収益化を同時に図る「一石三鳥」の構造を持つ。
国内製造業がScope 3排出量の削減を迫られる中、サプライチェーン上の副産物を活用したカーボンクレジット創出モデルは、GX-ETSやJ-クレジット制度との相互補完的な活用も視野に、他の素材・化学・エネルギー各社に対する有力な参照事例となりうる。
また、TNFDの枠組みにおける生物多様性情報開示とコベネフィットの定量的提示を組み合わせた統合報告の観点からも、先進的な取り組みとして評価できる。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001275.000078149.html