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NECとフェイガー、タイで農業由来カーボンクレジット創出に向けMOU締結 精密農業技術でGHG削減を可視化

2026.03.24 読了 約3分
NECとフェイガー、タイで農業由来カーボンクレジット創出に向けMOU締結 精密農業技術でGHG削減を可視化
出典:イメージ

日本電気(NEC)とフェイガーは2026年3月19日、タイにおける環境配慮型農業の普及と農業由来カーボンクレジットの創出を目的とした基本合意書(MOU)を締結したと発表した。

NECが有する精密農業(営農ソリューション)技術と、フェイガーが展開する脱炭素型農業支援サービスを組み合わせ、農業生産性の向上と温室効果ガス(GHG)排出削減の両立を目指す。

施肥管理のデジタル化でN2O排出を抑制

本事業の技術的核心はNECが持つ可変施肥技術にある。

センサーや衛星データを活用して圃場の状態をリアルタイムに把握し、過剰施肥を防ぐことで、農業分野における主要なGHG排出源のひとつである亜酸化窒素(N2O)の排出を低減する仕組みだ。N2Oは二酸化炭素(CO2)の約298倍の地球温暖化係数(GWP)を持つことから、施肥管理の精密化はGHG削減効果として定量的に大きなインパクトをもたらす。

フェイガーは農業由来カーボンクレジットの創出に必要な測定・報告・検証(MRV)体制の構築を担う。現地農家と連携してデータ収集・運用体制を整備し、削減効果の可視化とカーボンクレジット化を推進する。農家にとっては農業収入に加え、カーボンクレジット販売による新たな収益機会が生まれることになる。

ボランタリーカーボンクレジット市場への供給を視野に

両社が創出を目指す農業由来カーボンクレジットは、主としてボランタリーカーボンクレジット市場での流通を想定していると見られる。農業セクターのカーボンクレジットは「回避系クレジット」または「削減系クレジット」に分類され、適切な方法論と認証スキームの選定が事業の信頼性を左右する。

今回のプレスリリース段階では活用する認証基準(ベラ(Verra)/VCSやゴールドスタンダード(Gold Standard)など)の言及はなく、今後の実証フェーズでの選定が注目される。

また、タイは日本との二国間クレジット制度(JCM)の対象国でもある。創出されたカーボンクレジットがJCMの枠組みを通じて日本の国家決定貢献(NDC)達成に活用される可能性もあり、スキームの設計次第では政策的インセンティブとの相乗効果が期待できる。

タイ全域展開とアジア展開を視野に

両社はまず現地農家との実証事業で農業生産性とGHG削減の効果を定量的に検証したうえで、成果をもとにタイ全域での展開を目指す方針を示した。さらに将来的には他のアジア諸国への横展開も視野に入れており、日本発の農業由来カーボンクレジットビジネスモデルのアジア展開における先行事例となる可能性がある。

NECのGX事業開発統括部シニアディレクター・佐藤美紀氏は「タイの農業現場において生産性向上と環境負荷低減を両立する取り組みを進める」と述べ、フェイガー代表取締役・石崎貴紘氏は「環境に配慮した営農が正当に評価され、経済的にも持続する仕組みを確立する」とコメントした。

農業分野のGHG削減を精密農業技術と組み合わせてカーボンクレジット化するアプローチは、日本のJ-クレジット制度でも「農業土壌炭素」や「水稲の間断灌漑(AWD)」などを通じて一定の蓄積があるが、海外展開においては認証基準の選定とMRV体制の国際的な担保が課題となる。

タイはJCM対象国であり、創出カーボンクレジットをJCMに組み込む設計が実現すれば、日本の脱炭素調達ニーズを持つ製造業・商社系企業にとっても調達先として注目に値する。

農業由来カーボンクレジット分野でのアジア市場開拓を狙う日本企業は、MRV手法の選定と国際スタンダードへの準拠を早期に固めることが競争優位の鍵となろう。

参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001275.000078149.html

関連タグ JCM アジア 農業
カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。