三重県南伊勢町沖の熊野灘で創出されたブルーカーボンクレジットが、環境価値NFTプラットフォーム「シンラ(SINRA)」に2026年3月27日付で追加された。運営主体はパラミタ(paramita)で、特定非営利活動法人SEA藻、南伊勢町、紀北町と連携し、個人・企業向けにNFT形式で販売を開始した。
熊野灘では近年、海水温の上昇とガンガゼ(ウニ類)による食害が重なり、藻場の急速な消失が進んでいる。海底が白い岩肌だけになる「磯焼け」は海の生態系を根底から破壊し、CO2の吸収・固定機能も同時に喪失させる。
NPO法人SEA藻は2015年からガンガゼ駆除を軸とした藻場再生活動を展開してきた。漁業者・自治体・研究機関が連携する形で藻場を回復させ、同活動を通じて創出されたブルーカーボンクレジットは、国が運営するJ-クレジット制度のスキームで認証されている。具体的にはJブルークレジットとして発行証書交付式が実施されており、海洋生態系由来のカーボンクレジットとして制度的裏付けを持つ。
シンラは「地球上の自然が再生し続ける状態」と「地域経済の持続可能な運営」の実現を目的とする環境価値NFTプロジェクトとして、2023年8月に立ち上げられた。NFTを介してJ-クレジット制度等の自然資源の価値をデジタル化し、国内外の個人・企業の環境投資を促進する仕組みをとる。
今回の南伊勢町産ブルーカーボンクレジットの登録により、プラットフォーム上のカーボンクレジット創出地域はさらに拡大した。パラミタは今後も創出地域の追加を予定しており、自治体向けに環境再生・関係人口創出を目的とした連携提案も受け付けている。
海草・藻場・マングローブ等の海洋生態系が固定・貯留する炭素を指す「ブルーカーボン」は、陸域の森林炭素と並ぶ自然に基づく解決策(Nature-based Solutions, NbS)として国際的に注目が高まっている。日本では国土交通省・環境省が主導するJブルークレジット制度が整備されており、今回のように漁業者主体の藻場再生活動をカーボンクレジット化する事例が着実に積み重なっている。
熊野灘の事例が示す本質は、漁業現場の生態系保全活動がJ-クレジット制度とNFT流通基盤を接続することで、持続的な資金循環を生み出す可能性を実証した点にある。日本企業がScope3削減の文脈でブルーカーボンクレジットを調達する際、「創出プロセスの透明性」と「共同便益(コベネフィット)の可視化」が購買判断の鍵となるが、NFT形式はそのトレーサビリティをデジタルで担保するひとつのアプローチとなり得る。GX推進とネイチャーポジティブの両輪が求められる日本市場において、沿岸漁業とカーボンクレジット市場の連携モデルとして参照価値が高い。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000016.000124080.html