大阪ガス、Daigasエナジー(以下、Daigasエナジー)、および三井不動産の3社は、2026年3月23日、三井ショッピングパーク ららぽーとEXPOCITY(大阪府吹田市)において、米国産バイオメタンの環境価値証明書を付与したカーボンオフセット都市ガスを利用することで合意した。
海外産バイオメタンの環境価値を日本の商業施設で活用する取り組みとして、国内初の事例となる。
今回活用するバイオメタンは、ビーピー(bp)グループのアーキア・エナジー(Archaea Energy)が米国で生産したものである。大阪ガスは2026年1月に同社製バイオメタンを泉北製造所で受け入れ、その環境価値(ゼロエミ価値)の証明書をならぽーとEXPOCITYへ供給する都市ガスに付与する。
バイオメタンは、食品残渣・下水汚泥などの有機物がメタン発酵等で分解される過程に生じるバイオガスを精製したガスである。原料となる有機物は、成長過程でCO2を吸収した植物等に由来するため、燃焼時に大気中のCO2総量を増加させないカーボンニュートラルなエネルギーとして位置づけられる。
環境価値の証明・追跡には、北米で運用されている再生可能エネルギー属性証書システムであるM-RETS(Midwest Renewable Energy Tracking System)を活用する。これはいわゆるボランタリーカーボンクレジット市場の登録簿(レジストリ)とは異なるガス属性証書の追跡管理システムであり、バイオメタンの産地・製造工程・数量の一貫した管理(測定・報告・検証(MRV))を担う。
本取り組みにおいて特筆すべきは、プレスリリース注釈に明記された制度的制約である。現時点では、海外産e-メタン・バイオメタンの保有する環境価値は、日本の温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度(SHK制度)等での活用が認められていない。国の審議会等で算定ルールの検討が進む段階にある。
つまり、ららぽーとEXPOCITYがカーボンオフセット都市ガスを使用しても、現行ルール下では三井不動産のScope 1・Scope 2排出量を公式に削減したと算定できない。環境価値の主張はあくまでボランタリーベースにとどまり、SHK制度やGX-ETSに基づくコンプライアンスカーボンクレジット市場での活用には接続していない。
カーボンオフセット都市ガスの供給期間と並行し、ららぽーとEXPOCITYでは啓発イベント「デカボEXPO」が開催される。参加店舗の商品・館内設備の脱炭素貢献度を来館者に対して可視化し、カーボンニュートラルへの行動変容を促すことを目的とする。大阪ガスおよびDaigasエナジーは同イベントに協賛し、Daigasグループのブース出展を3月28日〜29日に予定している。
Daigasグループは2025年2月発表の「エネルギートランジション2050」を戦略の基軸とし、脱炭素社会に貢献する技術・サービスの開発を推進している。三井不動産グループは2024年4月に改定したグループ経営理念のもと、「環境との共生」をGROUP MATERIALITYの一項目として特定し、本業を通じたサステナビリティへの取り組みを継続している。
本事例は、海外産バイオメタンを用いたカーボンオフセット都市ガスという新たなサプライチェーンの実証として評価できる。
国内でのバイオメタン算定ルール整備が進めば、GX-ETSやJ-クレジット制度との接続が視野に入り、不動産・商業施設セクターにおける脱炭素手段の選択肢を大幅に拡大する可能性がある。
国内の施設運営企業や総合商社にとって、この制度整備の動向は今後の調達戦略を左右する重要な政策変数として注視すべきである。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000218.000139670.html