残余Scope3排出量の解消に向け、グローバルサウスの4プロジェクトから高耐久性クレジットを確保
米国の航空宇宙大手・ボーイング(Boeing)は2026年3月、炭素除去(CDR)カーボンクレジットの調達・管理プラットフォームを展開するカーボンフューチャー(Carbonfuture)と多年度にわたるフレームワーク契約を締結した。調達量は最低4万トンの高耐久性CDRカーボンクレジットで、航空業界における同種の大型調達案件として注目されている。
ボーイングが今回の調達で焦点を当てるのは、Scope3排出量のカテゴリー6、すなわち従業員の出張に伴うCO2排出量だ。航空機効率の向上や持続可能な航空燃料(SAF)の導入では削減が困難な「残余排出量」への対応策として、耐久性の高いCDRカーボンクレジットを活用する。
ボーイング グローバル・エンタープライズ・サステナビリティ担当バイスプレジデントのアリソン・メリア(Allison Melia)は次のように述べている。「航空業界は将来にわたる旅客需要を支えるため、排出量削減目標を設定しています。カーボンフューチャーと連携し、炭素除去技術の革新を後押しすることで、この目標達成に貢献できることを嬉しく思います」
今回調達するCDRカーボンクレジットは当初、グローバルサウスに展開する4件のバイオ炭カーボン除去プロジェクトから生成される予定だ。カーボンフューチャーが提供する統合型ポートフォリオ管理プラットフォームを通じ、ボーイングはカーボンクレジットの配分・追跡・透明性確保を一元的に管理できる。
また、カーボンフューチャー独自のデジタル・トラスト・インフラ(Trust Infrastructure)により、バイオ炭の生産から最終用途に至るCO2除去プロセス全体を精緻に記録するとともに、各クレジットに係る法的権原も明確化される。これはカーボンクレジット市場で課題とされるダブルカウントのリスクを低減し、追加性・永続性の担保を図る仕組みといえる。
カーボンフューチャーCEOのハンネス・ユンギンガー=ゲストリッヒ(Hannes Junginger-Gestrich)は以下のように語っている。「高耐久性の分散型ポートフォリオを構造化し、完全な透明性のもとで管理するインフラを提供することで、ボーイングが削減困難な排出量への対処を可能にします。耐久性ある炭素除去セクターの成長を支えるリーダー企業と協働できることを誇りに思います」
本契約は、ボーイングが掲げる2050年ネットゼロ戦略の一環として位置付けられる。国際航空の排出量削減枠組みであるCORSIAとも整合した取り組みであり、航空業界における高品質CDRカーボンクレジットの需要拡大を象徴する事例だ。なお、フレームワーク契約に基づき、ボーイングは将来的に追加のカーボンクレジットを購入するオプションも保有している。
日本のANAホールディングスやJALも2050年ネットゼロを掲げており、Scope3カテゴリー6(出張排出量)は対応が後手に回りがちな領域だ。ボーイングがバイオ炭由来の高耐久性CDRカーボンクレジットを正面から活用した本件は、GX-ETSの枠外で自社削減を補完する手法として日本の航空・製造業にも実践的な示唆を与える。カーボンフューチャーが提供するデジタル・トラスト・インフラのような測定・報告・検証(MRV)の高度化は、今後の日本企業のカーボンクレジット調達における基準設定にも影響を及ぼしうる。