シジジー・プラズモニクス(Syzygy Plasmonics)は2026年3月3日、ブラジルの大手バイオガス開発・運営企業ジオ・バイオガス&カーボン(Geo bio gas&carbon)との間で覚書(MOU)を締結し、サトウキビ残渣由来のバイオガスを原料とした商業規模の持続可能な航空燃料(SAF)生産プロジェクトを共同開発すると発表した。
シジジー・プラズモニクスが商業化を進めるのは、熱ではなく光(光子)を利用した光触媒反応炉プラットフォーム「GHG eリフォーミング(e-Reforming)」技術だ。再生可能電力と組み合わせることで、従来の化石燃料燃焼型プロセスと比較してCO2排出量とコストの双方を削減できるとしている。
ジオ社はブラジルの砂糖・エネルギーセクターにおけるバイオガスプロジェクトの先駆的オペレーターであり、サトウキビなどのアグロインダストリアル残渣からバイオガス・再生可能電力・バイオメタンを生産している。今回の協業では、ジオ社の既存・計画中のバイオガス施設ネットワークにシジジーの電化リフォーミング技術を組み合わせ、SAFおよびその他の低炭素燃料を製造する。
当初は年産10万トンの生産能力を持つサイトへの展開を目標とし、最終的には複数拠点の合算で年産52万5,000トン超の規模を想定している。
両社の協業が従来型の単一資産契約と一線を画すのは、ポートフォリオ型開発モデルを採用している点にある。ジオ社が保有・計画する複数の施設群を横断的にスクリーニングし、最適なロケーションを選定した上で複数のSAFプラントを並行開発する構造となっている。
ブラジルでは政府主導の混合燃料義務化規制の強化と航空会社需要の増大が重なり、SAF市場の急速な拡大が見込まれており、同モデルはインフラ展開を加速させる手段として機能する。
ブラジルでの合意は、シジジーが進めるグローバルな「NovaSAF」展開戦略の一環だ。同社はこれと並行して複数の国際的なMOUを締結している。
北米では、ノーススター・リニューアブル・フューエルズ(NorthStar Renewable Fuels)(業界ベテランのジム・コーウェイ(Jim Cowhey)とエド・ヘネシー(Ed Hennessey)が率いる)と覚書を締結し、年産2,500万ガロン(約7万5,000トン)のSAF生産を目指す非独占的ライセンス構造を整えた。
カリブ海・欧州では、イスロニアス(Islonias)(Biothek)のミゲル・アンヘル・マルティネス(Miguel Angel Martinez)と協力し、ドミニカ共和国での年産3万トン規模のフラッグシッププロジェクトを推進。スペイン・イタリア・フランス・コロンビア・チリへの展開も視野に、将来的な合算生産量30万トンを目標とする。
メキシコでは、北東部の埋め立て廃棄物を活用した年産最大10万トン規模のプロジェクトポートフォリオについて調査中だ。
これら一連の協定により、シジジーが2035年までに目指す年間100万トン規模のSAF生産という目標に向けた多角的な商業基盤の構築が進んでいる。
同社CEOのトレバー・ベスト(Trevor Best)は、「航空業界のネットゼロへの道は、多様で見過ごされがちな原料を産業規模の高付加価値燃料に転換する能力にかかっている。未活用のバイオガスはSAFのグローバル生産を再編できる豊富な資源だ」と述べた。
日本の航空会社(JAL・ANA)はCORSIAへの対応と自社のネットゼロ目標の達成に向けてSAF調達を急務とするが、国内生産インフラは依然として脆弱である。シジジーが構築するブラジル産バイオガス由来SAFのグローバルサプライチェーンは、日本の航空会社が長期購入契約(オフテイク契約)を通じてCORSIA対応カーボンクレジットの代替手段として活用できる現実的な調達先となり得る。
ブラジルは日本との二国間クレジット制度(JCM)の対象国でもあり、SAFプロジェクトとの連携によるカーボンクレジット創出の可能性も今後の注目点だ。