米航空宇宙大手のボーイング(Boeing)は2026年3月31日、テキサス州を拠点とする土壌炭素除去企業グラスルーツカーボン(Grassroots Carbon)との複数年オフテイク契約を締結したと発表した。
同契約に基づき、ボーイングは再生型牧草地管理を通じて生成された検証済みの土壌炭素除去(CDR)カーボンクレジットを最低4万トン購入する。
本契約で調達されるカーボンクレジットは、米国全土の再生型放牧および改良型草地管理プログラムを通じて生成される。再生型放牧は土壌有機炭素の蓄積を促進するとともに、土壌の保水力向上や生態系の強靭化にも寄与するコベネフィット(Co-benefit)を持つ。
米国には6億5,500万エーカー超の草地が存在する。このスケールは、即時展開可能な炭素除去(CDR)ソリューションとして同プログラムを他の技術的CDRと差別化する要素となっている。ボーイングは調達したカーボンクレジットを、出張に関連するScope3(カテゴリー6)の残余排出量への対応に充当する。
グラスルーツカーボンの土壌炭素プログラムは、地表から1メートル深の直接現場計測と実験室分析を基盤とする。測定・報告・検証(MRV)においては独立した第三者機関が認定済みの炭素標準を用いてデータを検証・認証し、健全な土壌に蓄積された大気中CO2の量を確認する。
同社はこれまでに190万トンのCO2除去を達成し、22州・220万エーカー超の草地で牧場主と協働してきた。
グラスルーツカーボンCEOのブラッド・ティッパー(Brad Tipper)氏は次のように述べた。「ボーイングのような信頼あるパートナーを獲得することで、厳密に計測された土壌炭素がスケールで持続的な気候ソリューションを提供できることを示している。水資源、生物多様性、農村経済の強化にも貢献するものだ。」
本契約はボーイングによる多様な炭素除去(CDR)技術調達戦略の一環である。同社は2026年3月にも、バイオ炭ベースのCDRカーボンクレジット4万トンに関する多年間契約をカーボンフューチャー(Carbonfuture)と締結している。また、過去にはチャームインダストリアル(Charm Industrial)との10万トン契約、エクアティック(Equatic)との6万4,000トン契約も締結しており、高品質CDRカーボンクレジットの多元的な積み上げを図っている。
ボーイングのグローバルエンタープライズサステナビリティ担当バイスプレジデント、アリソン・メリア(Allison Melia)氏は、「グラスルーツカーボンとの協働を通じて、航空業界全体に恩恵をもたらす炭素除去技術を加速させることを誇りに思う。長期的な航空輸送の成長を可能にし、航空会社の排出削減目標を支援することがボーイングにとっての重要な優先事項だ」と述べた。
土壌炭素除去(CDR)カーボンクレジットは、地表1メートル深の現場計測と独立した第三者検証を組み合わせることで永続性と追加性を担保しようとする取り組みであり、自然に基づく解決策(NbS)の中でも方法論の厳密さが際立つ類型だ。
日本においてはJ-クレジット制度の農地炭素貯留プロジェクトが類似の概念を持つが、計測深度や検証頻度の面で国際的な高品質基準との差異が課題として残る。
Scope3の残余排出対応を迫られる日系航空・製造業にとって、本契約は高品質な土壌CDRカーボンクレジットの調達モデルとして参照価値が高い。