公益事業会社のレン(Wren)は2026年5月12日、気候ソリューションを対象とする2026年度公募(Request for Proposals)を開始した。1組織あたり10万ドルから50万ドル(約1,500万円から7,500万円)を6カ月から12カ月で供与する。
注目すべきは資金提供の形態である。
レンは助成金と並んで、カーボンクレジットの買取(オフテイク契約、プレパーチェス、スポット購入)を選択肢として提示している。プロジェクト開発者は補助金的な資金と、生成するカーボンクレジットの将来買い手確保という二つの経路を、案件特性に応じて選択できる構造となっている。
公募は3つの経路に分かれる。
自然由来カーボンクレジット領域では、植林・再植林・植生回復(ARR)に加え、稲作における間断灌漑(AWD)等のメタン削減プロジェクトを優先する。政策領域では、セメント、データセンター、航空機の飛行機雲(コントレイル)、原子力エネルギーに関連する政策イニシアチブを対象とし、システム変革を通じた排出削減または炭素除去(CDR)の拡大に貢献する取組を支援する。メタン削減領域では、産業・廃棄物・バイオダイジェスター分野を対象とし、ガス漏洩検知・修復(LDAR)、炭鉱メタン削減、埋立地ガス回収・破壊を優先分野として明示している。
3経路に該当しない取組についても、具体性・期限明確性・実質的なインパクトを示せる場合は応募を受け付ける。
評価基準としてレンが掲げるのは、CO2e1トンあたりのコスト効率、規模拡大と類似事業へのコスト低下波及、関係者構築やデータ蓄積を通じた追加的な気候行動の触発、資金供与期間を超えて持続する成果、そして「いま投じる1ドルが他のいかなる時点よりも持続的成果の確率を高める」触媒的タイミング、の5項目である。
買い手によるカーボンクレジット直接買取型RFPは、近年カーボネアーズ(Carbonaires)など複数の主体が展開しており、ボランタリーカーボンクレジット市場における資金調達手法として一定の定着を見せている。レンの今回の公募は、これに助成金経路を並列させる点で資金設計の選択肢を広げるものである。
もっとも、助成とカーボンクレジット買取を同一公募の中で並列させる設計には、評価基準の整合性や、案件選定における判断軸の混在といった論点も残る。買取案件は将来のカーボンクレジット品質と引き渡し能力が評価されるのに対し、助成案件は触媒的インパクトが主軸となるため、両者を一つの選考プロセスで処理する運用上の負荷は小さくない。