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スイス連邦、バイオマス発電所のCCSプロジェクトに4,170万フランを助成 気候・イノベーション法が初の大型支援案件を承認

2026.04.02 読了 約5分
スイス連邦、バイオマス発電所のCCSプロジェクトに4,170万フランを助成 気候・イノベーション法が初の大型支援案件を承認
出典:イメージ

スイス連邦エネルギー庁は2026年4月1日、オーテルフィンゲン(Otelfingen)のバイオマス発電所を対象とした炭素回収・貯留(CCS)プロジェクトに対し、最大4,170万スイスフラン(約83億4,000万円)の連邦補助金を交付することを発表した。

2025年1月に施行されたスイス気候・イノベーション法に基づく産業脱炭素支援として、同規模の案件が承認されたのは今回が初めてとなる。

プロジェクトの概要と参画企業

採択されたのは、レギオナルヴェルケ・バーデン(Regionalwerke Baden AG)が主申請者として提出した提案である。開発はBKWアエク・コントラクティング(BKW AEK Contracting AG)およびリンデ・ガス・スイス(Linde Gas Schweiz AG)との共同体制で行われ、エアフィックス・カーボン(Airfix Carbon AG)とサウスポール(South Pole AG)がサポーターとして加わる。

プロジェクトは、オーテルフィンゲンのバイオマス発電所から排出されるCO2を捕集し、その用途を二方向に分岐させる点が特徴的だ。

  • 欧州域内の貯留施設への輸送・永久隔離:回収CO2の一部はヨーロッパ国内の地中貯留施設へ送られ、永続性のある炭素隔離を実現する
  • 産業用途への再利用:残りは気候中立な産業ガスとして再活用され、化石由来のCO2代替として機能する事実上の炭素回収・利用(CCU)に相当する

この二本立て構成により、本プロジェクトは炭素回収・利用・貯留(CCUS)の枠組みを包括的に実践するモデルケースとして位置づけられる。

スイス初の分離技術を導入

本プロジェクトで採用されるCO2分離技術は、スイス国内では前例のない方式である。バイオマス燃焼排ガスからの高効率回収を可能にするこの技術の初実装により、スイスの産業エネルギーセクターにとって重要な技術的マイルストーンとなる。

また、バイオマス由来の排出ガスを対象とすることで、理論上は大気中のCO2をネットでマイナスに転じさせる**バイオエネルギー炭素回収・貯留(BECCS)**に近い概念も内包しており、CDR(炭素除去)の観点からも注目を集める案件といえる。

2030年までに最大1,200億円規模

本助成はスイス連邦が運営するITINEROプログラムの一環として拠出された。同プログラムは、脱炭素化に向けた革新的技術・プロセスへの投資を支援するもので、2030年までに最大12億スイスフラン(約2,400億円)の公的資金を投入する計画だ。補助率は適格コストの最大50%とされており、ネットゼロ達成ロードマップを有する企業や業界団体のほか、一定条件を満たす中小企業も申請可能である。

今回の案件選定は二段階入札方式で行われた。初回公募には21件の提案が集まり、17件が第2ラウンドへ進出。しかし2025年10月31日の最終締切までに正式な提案書を提出したのは3件にとどまり、競争の実質的な厳しさを物語っている。

なお、ITINEROプログラムでは別途、電動トラック向け充電インフラ整備にも2,000万スイスフラン(約40億円)の支援が行われており、2026年初頭の公募開始以来すでに100件超の申請が寄せられている。スイス商用車協会とコンサルティング会社EBPが実施主体として選定されている。

「資金のギャップ」を公的支援が橋渡し

欧州では、各国政府が炭素管理ソリューションの拡大と輸送部門の電動化に向けた公的資金の投入を加速させている。アナリスト各社は、こうした公的助成が初期段階のイノベーションから商業的展開への移行において不可欠な「ブリッジ」として機能していると指摘する。特にハードアビテメント(削減困難)セクターにおいては、民間資金だけでは担いきれないリスクを政府が肩代わりする形での支援スキームが主流化しつつある。

スイス連邦とノルウェーは2025年6月17日、CO2の海底貯留に関する二国間協定を締結しており(ロスティ連邦顧問が署名)、今回のプロジェクトで回収されたCO2が将来的にノルウェーの貯留インフラを活用する可能性も視野に入る。

スイスの今回の動きは、国家レベルでCCSを産業政策の中枢に組み込む先行事例として注目に値する。

日本においても、GX推進法のもとでCCS事業法が2024年に成立し、国内外でのCO2貯留実証が本格化しつつあるが、民間投資を促す補助スキームの設計ではスイスのITINEROモデルが参照軸となりうる。

特に、適格コストの50%補助・ネットゼロロードマップとの連動・中小企業への門戸開放という三要素の組み合わせは、日本の中堅製造業向けGX施策の設計において示唆的だ。

バイオマス排気からのCCUS実装という今回の事例は、製紙・廃棄物発電・製糖など国内バイオマス利用産業へのCDRアプローチとしても応用可能性がある。

参考:https://www.bfe.admin.ch/bfe/de/home/foerderung/dekarbonisierung/foerderung-neuartige-technologien-und-prozesse.html

カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。