ベルギー製モジュール型DACシステムが生み出す恒久的除去カーボンクレジット、買い手の長期調達シフトが加速
炭素除去(CDR)スタートアップのシロナ・テクノロジーズ(Sirona Technologies)は2026年3月5日、カーボンクレジットおよび環境コモディティプラットフォームのパッチ(Patch)の仲介により、複数年にわたる直接空気回収(DAC)カーボンクレジットの供給契約(オフテイク契約)を締結したと発表した。対象カーボンクレジットはシロナのモジュール型DACプロジェクトから発生するものであり、今回の契約によって得られる支援は同社の次期商業キャパシティの展開を加速させる。
シロナによれば、過去1年でオフテイクパイプラインは着実に拡大しており、買い手企業の行動様式に明確な変化が生じている。単年度での調達検討から、2020年代後半以降の恒久的除去量を確保するための複数年契約へと移行する動きが顕著だ。
今回の買い手が契約に踏み切った主な理由として、シロナは以下の3点を挙げている。
シロナのDACユニットはベルギーで製造され、世界各地のプロジェクトサイトへ迅速に展開される。このモジュール型アプローチにより、繰り返し可能な品質管理、短期導入、複数地域での並行スケールアップが可能となっており、買い手にとっては納入確実性と長期調達計画の明確化につながる。
パッチは炭素除去(CDR)カーボンクレジットの長期購買スキームの設計と、買い手の調達制約への対応において豊富な実績を持つ。同社の専門知識を活用することで、契約締結までのリードタイムが短縮され、買い手企業は関心表明から署名済み契約へより効率的に移行できる。現在、パッチはオートデスク(Autodesk)、ワークデイ(Workday)、ベイン・アンド・カンパニー(Bain & Company)を含む数百社に対し、数百万トン規模の自然由来および技術由来の炭素除去・回避カーボンクレジットの調達を支援している。
シロナCEO兼共同創業者のトールフ・グティエレス(Thoralf Gutierrez)氏は次のように述べた。「買い手企業が探索フェーズから長期コミットメントへと移行するにつれ、オフテイクパイプラインは拡大し続けている。パッチとの連携により、企業は恒久的な炭素除去(CDR)の調達方法を理解し、自社のタイムラインに合った契約を構築できる。今回のオフテイクは次の展開フェーズを支えるものであり、商業プロジェクトが本格稼働するにつれてさらなる契約が見込まれる」
シロナは2026年中に最初の商業ユニットから炭素除去(CDR)カーボンクレジットの供給開始を予定しており、コミット済みオフテイクの増加と展開スケジュールの順調な進捗を背景に、単独プロジェクトから複数地域・複数プロジェクトの恒久的除去ポートフォリオへと移行していく段階にある。高品質な恒久的炭素除去(CDR)カーボンクレジットの供給はなお限定的であるなか、今回の複数年契約は将来の供給制約に先んじた戦略的ポジショニングとして注目される。
GX-ETSの本格稼働を見据え、日本企業でも炭素除去(CDR)カーボンクレジットの長期調達を検討する動きが始まりつつある。しかし今回のシロナ事例が示すように、恒久的除去系の高品質カーボンクレジットは供給量が限られており、早期のオフテイク契約締結が将来の調達確実性を左右する。
パッチのような専門仲介プラットフォームの活用も含め、国内企業は今から複数年調達戦略を具体化する必要がある。