大阪ガスは2026年5月20日、Bain & Company(ベイン・アンド・カンパニー)、Carbon Growth Partners(カーボン・グロース・パートナーズ)、CATL(寧徳時代新能源科技)、Climate Bridge International(クライメート・ブリッジ・インターナショナル)、Climate Impact X(クライメート・インパクト・エックス)、Enterprise Singapore(エンタープライズ・シンガポール)、GenZero(ジェンゼロ)、三菱商事、Rubicon Carbon(ルビコン・カーボン)、Tencent(テンセント)、Vale(ヴァーレ)、WWF Singapore(WWFシンガポール)とともに、カーボンクレジットの新たな国際アライアンス「Action for a Resilient Climate Coalition(ARC Coalition)」に参画すると発表した。シンガポールを拠点とする非営利団体として設立される。
ARC Coalitionは高品質なカーボンクレジットに対する企業需要を集約し、創出プロジェクトへの資金供給を支援することを目的とする。当面はアジア地域における需要集約に注力し、2030年までに1,000万トン以上のカーボンクレジット調達を目標に掲げる。
ARC Coalitionの構造的特徴は、需要集約型アライアンスとしては初のアジア軸での設計にある。
これまで企業主導の需要集約型イニシアチブとしては、グーグル、メタ、マイクロソフト、セールスフォース等が自然由来CDRに集中するSymbiosis Coalition、技術由来CDRに先行投資するFrontier、技術由来CDRを対象とするNextGen CDRが先行してきた。いずれも欧米テック企業ないし欧州大手の主導であり、対象セグメントも比較的限定的である。
ARC Coalitionはこれらに対し、参画機関の重心がアジアに置かれている。
中国からCATLとTencent、シンガポール政府系のEnterprise SingaporeとGenZero、日本から大阪ガスと三菱商事という顔ぶれであり、ブラジル鉱業大手のValeも加わる。対象セグメントも自然由来・技術由来を横断する設計である。
供給側支援の枠組みも独自色を打ち出している。
共通の目的を持つパートナーや金融機関と連携し、初期段階の高品質なプロジェクトへの資金供給の仕組み構築・実装を進めるとしており、需要集約と並行して供給拡大メカニズムの整備を企図する点が、他の需要集約アライアンスとの差別化要素となる。
カーボンクレジットの選定・活用基準について、ARC CoalitionはICVCMが策定したコアカーボン原則(CCPs)や、COP29で英米シンガポール等が立ち上げたCoalition to Grow Carbon Marketsの枠組みを参考とするとしている。
同時に、初期段階プロジェクトを支援できる柔軟性も確保するとしており、格付機関の活用も明示している。
もっとも、厳格性と柔軟性の両立は容易ではない。初期段階プロジェクトへの柔軟な資金供給は供給拡大には資する一方、MRVの成熟度が低い段階での評価軸をどう設計するかが運営上の論点となる。
なお、ARC Coalitionは自然由来カーボン除去クレジットに特化したSymbiosis Coalitionとも連携し、品質基準・デューデリジェンス・契約プロセスの高度化に努めるとしている。
ARC Coalitionは、需要集約型アライアンスのアジア版という単純な構図ではなく、アジア発の高品質VCM需要を制度化する構造転換の起点として位置づけられる。
日本企業にとっての示唆は、大阪ガスと三菱商事という日本のVCM主要プレーヤーが揃って参画した事実そのものにある。
両社はそれぞれ国内ガス事業の脱炭素戦略、海外CDRプロジェクトへの出資・オフテイク実績を持ち、日本のVCM需要側を実質的に牽引する立場にある。両社が同一アライアンスで需要集約と供給形成の双方に関与する構図は、日系企業のカーボンクレジット調達がこれまでの個別調達中心から集合調達へとシフトする契機となりうる。
GX-ETSの本格運用と並行して、ボランタリー市場側の需要集約メカニズムが日本企業を巻き込む形で立ち上がる点は、日本のカーボンクレジット市場全体の取引構造を左右する論点となる。
参考:https://www.osakagas.co.jp/company/press/pr2026/1801450_60967.html