「アドバンス・カーボン・リムーバル・コアリション(Advance Carbon Removal Coalition)」が正式発足、官民横断で国産CDRの商業化を加速
2026年3月5日、カナダ・オタワで開催された「カーボン・リムーバル・デー2026」において、アドバンス・カーボン・リムーバル・コアリション(Advance Carbon Removal Coalition、以下ACR)が正式に発足した。
カーボン・リムーバル・カナダ(Carbon Removal Canada)のイニシアチブとして立ち上げられたACRは、カナダ政府を含む官民パートナーシップを通じ、2030年までにカナダ国内の炭素除去(CDR)プロジェクトへの購入・投資・プロジェクトファイナンス合計で1億カナダドル(約115億円)の新規資金動員を目標に掲げる。
ACRの創設メンバーには、カナダ政府のほか、BMO、クライムファイ(ClimeFi)、ノースエックス・クライメート・テック(NorthX Climate Tech)、RBC、ショッピファイ(Shopify)、バンシティ(Vancity)が名を連ねる。創設メンバーがすでにカナダのCDRエコシステムに投じた累積額は7,500万カナダドル(約86億円)を超えており、新連合の活動は実績のある資本基盤の上に立ち上がる形となる。
ACRは、高品質なCDRカーボンクレジットへの需要構築を中核に据え、市場の断片化を解消するための共有プラットフォームとして機能することを目指す。また、直接空気回収(DAC)、岩石風化促進(ERW)、海洋炭素除去(mCDR)など多様な技術に対し、統一された需要シグナルを発信することで、プロジェクトへの民間投資の確信度を高める狙いがある。
ACR創設ディレクターのエド・ウィッティンガム(Ed Whittingham)氏は、「カナダには人材、地質、クリーン電力という優位性がある。真剣な買い手と投資家を結集させることで、カナダのCDRセクターを断片的な状態から資金調達可能な状態へと転換させる」と述べた。
ノースエックスはACRの創設メンバーとして参画するとともに、カナダ有数のCDR早期段階ファンドとしてセクターの供給側を支えてきた。同組織はこれまでに7,950万カナダドル(約91億円)超を79件のプロジェクトに投資し、累計6億1,000万カナダドル(約702億円)超の後続投資を誘発。800件以上の雇用創出に貢献している。
ノースエックス最高投資責任者のカーヘイ・ロー(Ka-Hay Law)氏は、「今必要なのは、突破口から実装へ移行するための協調的な資本と明確な市場シグナルだ。ACRへの参画を通じて、ローカルな強みをグローバルな気候ソリューションへと転換していく」と語った。
ノースエックス傘下のCDR企業は、すでに複数の大型カーボンクレジット売買契約を締結している。
アルカ(Arca)は産業鉱物化技術を用いた炭素除去(CDR)のリーダーとして、マイクロソフト(Microsoft)との間で10年間に約30万トンの耐久性ある除去カーボンクレジットを供給するオフテイク契約を締結した。
CO280は米国のパルプ・製紙工場における生物起源炭素の回収・貯留を手掛けるCDRプロジェクト開発企業であり、マイクロソフトとの間で12年間・368万5,000トンの除去カーボンクレジット購入契約を締結。これはエンジニアリング型CDRの単一購入案件としては世界最大規模の一つとされる。
ニューライフ・グリーンテック(NULIFE GreenTech)は、CDR購買コンソーシアムのフロンティア(Frontier)と複数年にわたる4,420万米ドル(約69億円)のオフテイク契約を締結し、12万2,000トンの除去カーボンクレジットを供給する。
カーボン・リムーバル・カナダによれば、グローバルなCDR市場は今後数十年で兆ドル規模に達すると見込まれており、カナダにとっては2050年までにGDPを最大800億カナダドル(約9.2兆円)押し上げる可能性があるとされる。ACRはこの機会を捉え、カナダが地質的優位性・クリーン電力・エンジニアリング技術を生かした世界の炭素除去産業のハブとなることを目指す。
カナダが官民一体で需要サイドの連合体を組成したことは、日本のGX-ETSや炭素除去市場の設計に対して重要な比較事例を提供する。
ノースエックスが実証したように、早期段階の資本供給→技術実証→大口オフテイク契約という段階的な「市場形成モデル」は、日本版CDRの商業化ロードマップにも応用可能である。
J-クレジット制度における除去系クレジットの拡充と需要側のアンカー調達の仕組み構築が、日本市場の急務となっている。