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シンガポール、世界銀行とカーボン市場プログラムを発足 ホスト国向けインフラ整備で国際標準化を主導

2026.05.25 読了 約4分
シンガポール、世界銀行とカーボン市場プログラムを発足 ホスト国向けインフラ整備で国際標準化を主導
出典:イメージ

シンガポール政府は2026年5月20日、世界銀行グループと連携した新プログラム「Singapore Carbon Markets Programme」の発足を発表した。同国で開催中の国際会議 Innovate4Climate で公表されたもので、両者の戦略的パートナーシップの一環に位置づけられる。

プログラムは、カーボンクレジットを創出するホスト国側の制度・技術インフラ整備に焦点を当てる。具体的には3本柱で構成される。

第一に、カーボン市場インフラと技術の強化である。国際基準と相互運用可能なカーボンクレジットレジストリの構築支援、dMRVの新クレジット種への適用拡大に取り組み、対象には再生農業由来のカーボンクレジットも含まれる。第二に、カーボンクレジットの収益化促進である。買い手レベル・国レベルでの需給アグリゲーション手法を試行し、取引コストの低減、需要喚起、未開拓市場のプロジェクト開発者向けデリスキングを進める。第三に、ホスト国の能力構築と市場準備支援である。国家カーボン市場戦略、政策、運営機関の設計を支援し、国家間の知見共有も含めて推進する。

世界銀行グループ気候担当ディレクターのジェイミー・ファーガソン氏(Jamie Fergusson)は「カーボン市場は途上国にとっての気候資金源となりうるが、それはインフラ、市場の信認、技術的能力をもってインテグリティを伴う形で参加できる場合に限られる」と述べた。シンガポール国家気候変動事務局(NCCS)気候変動担当局長のベネディクト・チア氏(Benedict Chia)は、本プログラムが「ホスト国が国際カーボン市場に意味のある形で参加し、便益を享受することを支援する」と位置づけた。

シンガポールは2019年に炭素税を導入し、複数のホスト国とパリ協定6条に基づくカーボンクレジット購入契約を締結してきた。さらに英国・ケニアと共に主導する Coalition to Grow Carbon Markets、世界銀行グループおよびIETA(International Emissions Trading Association)とともに創設した CAD Trust(Climate Action Data Trust)など、複数の国際枠組みに関与している。今回のプログラムは、これら既存の取り組みとの連続線上に置かれる。

ただし、本件を単純な「既存連携の追加」とのみ捉えるのは不十分である。シンガポールはこれまでカーボン市場における買い手・金融ハブとしての地位を強調してきたが、本プログラムでは世界銀行と組むことで、ホスト国側のインフラ供給国としての役割を制度化する構図となる。CAD Trust によるレジストリ間のデータ連携、Coalition to Grow Carbon Markets による需要側原則、そして本プログラムによるホスト国側インフラ整備が連動することで、シンガポール+世界銀行の枠組みが事実上のグローバル標準形成プロセスとして機能する余地が生じている。

一方で、需給アグリゲーションを通じた市場形成については、規模効果と引き換えに価格決定の透明性や個別プロジェクトの差別化が損なわれるとの指摘もある。インテグリティを担保する仕組みの実装段階での厳格さが、本プログラムの実効性を左右する論点となる。

本プログラムは、ホスト国向けインフラ整備という観点において、JCM(二国間クレジット制度)の国際展開と機能領域が重なる。日本はJCMを通じて29か国とパートナーシップを構築してきたが、シンガポールは世界銀行のブランドと資金力を活用することで、より広範なホスト国網に対する制度供給能力を備える可能性がある。日本のホスト国戦略は、二国間枠組みの維持に加えて、世界銀行系・シンガポール系の標準とどう接続・差別化するかという論点に直面する。

参考:https://www.nccs.gov.sg/singapore-partners-with-the-world-bank-group-to-launch-singapore-carbon-markets-programme/

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カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。