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バングラデシュ初のVCSアグロフォレストリークレジットが発行、小規模農家還元型モデルが南アジアで本格始動

2026.05.19 読了 約5分
バングラデシュ初のVCSアグロフォレストリークレジットが発行、小規模農家還元型モデルが南アジアで本格始動
出典:イメージ

Varaha ClimateAg Private Limitedと Sustainable Agriculture Foundation Bangladesh(SAF Bangladesh)は、Verraの Verified Carbon Standard(VCS)の下でバングラデシュ初となるアグロフォレストリー由来カーボンクレジットの発行を発表した。VCS Project 4456として登録された本案件では、160のデモンストレーション農場から6万トン超のカーボンクレジットがすでに発行されている。

対象地域はバングラデシュ・ラジシャヒ管区バリンド地帯であり、土壌侵食、栄養保持力の低下、水不足といった構造的課題を抱える地域である。プロジェクトは小規模農家による劣化土壌の修復、気候レジリエンスを高める農法の導入、マンゴーやグアバを中心とした高密度・節水型アグロフォレストリーの展開を組み合わせている。方法論カテゴリはARR(植林・再植林・植生回復)に分類される。

数十万ドル規模の収益を2026年単年で農家に分配

プロジェクト開発側によると、今回のマイルストーンとなる発行により、2026年単年で参加する小規模農家へ数十万ドル規模のカーボン収益分配が見込まれている。ビンテージが追加で売却されるごとに、さらなる支払いが予定されている。

長期的には、20年間で約130万トンのCO2削減を見込んでおり、累計で約1,450万ドル(約23億円)のカーボン収益が生成される計画である。対象面積は現在の2,000ヘクタール規模から、2028年までに30,000〜35,000ヘクタールへ拡大することを目標としている。SAF Bangladeshが2023年に開始したCCICTA(Carbon Credit Income for Climate Smart Technology Adaptation)プロジェクトの全体構想では、最終的に1万ヘクタールの登録を目指しており、すでに5,000ヘクタール・3,000農家が植林・再植林・植生回復活動に参加している。

カーボンファイナンスは、果樹が収益を生むまでの4年間の生育ギャップを埋めるブリッジ機能として位置づけられている。歴史的にこの生育期間が小規模農家を高付加価値の永年作物から遠ざけてきた構造を、カーボン収益によって解消する設計である。

国際機関・グローバル企業の重層的支援

技術ファシリテーションは世界銀行グループの 2030 Water Resources Groupが担い、節水型・高密度のマンゴー栽培モデルを生計農家向けに実装する実証を支えた。先行プロジェクトは The Coca-Cola Foundation および HSBC Bangladeshが資金を提供しており、農家アウトリーチパートナーとして DASCOH Foundationが関与する。

「これはバングラデシュにとって特筆すべき瞬間であり、関係者全員の集合的努力に対する強い検証である」とSAF Bangladeshの Md. Farhad Zamil エグゼクティブディレクターはコメントしている。

国家戦略との接続

本プロジェクトは、バングラデシュの国家戦略とも整合する。同国は世界最低水準のGHG排出国の一つでありながら、2030年までに8,947万トン(22%)の排出削減を公約しており、農業セクターの効率化と気候レジリエンス強化、輸出志向型農業への転換を国家優先課題として位置づけている。

一方で、ARR系カーボンクレジットは永続性とリバーサルリスクの管理が品質要件の中核となる。20年の作付サイクルを前提とする本案件において、2040年までのクレジット発行期間中に農家へのインセンティブ構造が維持され続けるかは、買い手側が今後継続的に検証する論点となる。

編集部の視点

バングラデシュ初のVCS発行は、市場全体の構造転換というより、南アジアにおけるARR案件積み上げの一例として位置づけられる。

ただし、小規模農家への収益分配を制度設計の中核に据えたこのモデルの規模とインパクトは、過小評価すべきではない。160農場・数十万ドル単位という分配規模は、カーボンファイナンスが「気候資金」から「農村開発資金」へと機能を拡張しつつある実証である。

南アジアのLDCにおいてVCMがフロンティアとして機能し始めた点も注目に値する。バングラデシュは8,947万トンの削減公約を持ち、ホスト国としてのカーボン主権を行使する制度基盤を整えつつある段階にある。本案件のクレジットは現時点でボランタリー市場向けだが、将来的にパリ協定6条の枠組み下でITMOへ転換される可能性を含めれば、ホスト国の制度成熟度と国際買い手との相対取引の在り方が次の論点となる。

LDC×小規模農家×NbSという組み合わせは、テック大手による高単価DAC・BECCSオフテイクとは別軸の需要層を形成しつつあり、買い手側の調達戦略における自然由来クレジットの位置づけを再定義する事例である。

参考:https://susagfoundation.org/thematic-areas/carbon-credit

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カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。