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カリフォルニア州民主党議員15名、CARB「キャップ&インベスト」制度改正案の見直しを要求 エネルギー価格高騰とガソリン価格上昇の懸念

2026.03.15 読了 約5分
カリフォルニア州民主党議員15名、CARB「キャップ&インベスト」制度改正案の見直しを要求 エネルギー価格高騰とガソリン価格上昇の懸念
出典:イメージ

2026年3月、カリフォルニア州下院の民主党議員15名が、カリフォルニア大気資源局(California Air Resources Board、以下CARB)に対し、州の排出量取引制度(ETS)であるキャップ&インベスト(旧キャップ&トレード)制度の改正案を再検討するよう公式書簡で要請した。

注目すべきは、書簡に署名した全15名が、わずか1年前にこの制度を2045年まで延長する権限をCARBに付与した州法(下院法案1207号、Assembly Bill 1207)に賛成票を投じていた点である。

13年の実績と2045年カーボンニュートラル目標

CARBは2026年1月13日、キャップ&インベスト制度の改正草案を公表した。同制度は13年間にわたり運用され、コンプライアンス率はほぼ100%を維持している。これまでに約340億ドル(約5兆4,000億円)の気候投資資金を創出し、50万件超のプロジェクトを支援、3万人の雇用を生み出してきた。投資額の70%以上が低所得コミュニティや不利な立場にある地域に配分されている。

改正案の主要ポイントは以下の通りである。

  • 排出枠の供給量縮小
    CARBは2027年から2030年の間に1億1,830万枚の排出枠を市場から回収する方針を示している。この供給量削減により、排出枠の価格上昇圧力が高まる見込みである。
  • 天然ガスから電力への無償排出枠移転
    天然ガス事業者から電力事業者への無償排出枠の移管が新たに義務付けられ、電化への移行を促進する。
  • オフセットプロトコルの見直し
    AB 1207はCARBに対し、炭素除去(CDR)を含む新たなオフセットプロトコルの開発を検討するよう求めている。また、SB 840により、2026年12月までにコンプライアンス・オフセットプログラムの調査を実施し、2029年1月までに全プロトコルを最新の科学的知見に基づき更新することが義務付けられた。

民主党議員の反旗、エネルギー価格と製油所撤退リスク

書簡を主導したのは、下院多数党リーダーのセシリア・アギアール=カリー(Cecilia Aguiar-Curry)議員(民主党)らである。議員らは、CARBの改正案が燃料・エネルギーコストをさらに押し上げ、すでに全米最高水準にあるカリフォルニア州のエネルギー価格を悪化させると懸念を表明した。

具体的な論点は以下の通りである。

  • ガソリン価格への影響
    排出枠の供給量縮小により、2030年までにガソリン価格が1ガロン当たり1.21ドル(約192円)以上上昇するとの分析が業界側から示されている。中東情勢の緊迫化(米・イラン紛争)に伴う原油価格高騰と相まって、すでにガソリン価格が1ガロン5ドル(約795円)を超える地域もあり、政治的緊張が高まっている。
  • 製油所閉鎖リスク
    シェブロン(Chevron)の幹部アンディ・ウォルツ(Andy Walz)氏は、改正案が州内に残る製油所の存続を脅かすと声明で警告した。すでにカリフォルニア州では2カ所の製油所が閉鎖を発表しており、シェブロン自身も州外撤退の可能性を示唆している。
  • 州外への影響波及
    ネバダ州のロンバルド(Lombardo)知事もニューサム知事に書簡を送り、ネバダ州がカリフォルニア州の精製能力に構造的に依存している現状を訴えた。西部燃料市場には余剰能力がほとんどなく、一度閉鎖された精製能力は回復が困難であると指摘している。

環境団体からの「不十分」との批判も

一方で、環境防衛基金(Environmental Defense Fund)を含む環境団体の連合は、CARBの改正案はむしろ十分に野心的ではないと批判している。環境団体側は、2045年カーボンニュートラル達成に向けた短期的な排出削減ペースが不足しているとの立場である。

CARBは改正案について、20年間の遵守コストを約1,240億ドル(約19兆7,000億円)と試算する一方、健康改善を含む州全体の便益を約1,807億ドル(約28兆8,000億円)、気候被害の世界的回避額を最大4,850億ドル(約77兆2,000億円)と推計している。

今後のスケジュール

パブリックコメント期間は2026年1月23日から3月9日まで実施され、理事会での採決は2026年第2四半期に予定されている。施行日は2026年9月1日を目指している。

本件は、排出量取引制度(ETS)の制度設計における排出枠の供給量管理と経済的影響のバランスという普遍的課題を鮮明に示している。

日本のGX-ETSフェーズ2においても、排出枠の段階的縮小ペースと産業競争力への影響は避けて通れない論点である。カリフォルニア州の経験は、制度の野心度を引き上げる際に発生するカーボンリーケージリスク(製油所の州外・国外移転)と、エネルギー安全保障上の脆弱性を如実に物語っている。

国内精製事業者、電力事業者にとって、排出枠の無償配分から有償化への移行速度は経営戦略の根幹に関わる。また、AB 1207が炭素除去(CDR)を含む新規オフセットプロトコルの検討をCARBに求めた点は、コンプライアンス市場におけるCDRクレジットの位置づけを巡る国際的議論の先行事例として注目に値する。

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カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。