経済産業省は2026年4月24日、令和8年度第1回J-クレジット売払いに関する公募予告を公表した。
同省が保有するJ-クレジットを再生可能エネルギー発電起源と省エネルギー起源あわせて30万トン程度売り払う計画で、公募要領は2026年5月中下旬以降に公開される予定である。
今回の公募の最大の特徴は、買い取ったカーボンクレジットを取引プラットフォーム上で流通させる事業者を優先的に評価する設計を一段と踏み込んで制度化した点にある。
経済産業省はGX-ETSとの整合性を見据え、J-クレジット制度を通じた炭素価格の形成機能を強化する方針を鮮明にした。
売払い対象は、経済産業省が保有する次の2区分のJ-クレジットである。
再エネ(電力)区分は、個人向け太陽光発電設備補助事業によって創出された再生可能エネルギー発電起源のJ-クレジットが対象となる。
省エネ区分は、個人向けコージェネレーション設備および電気自動車補助事業から創出された省エネルギー起源のJ-クレジットが充てられる。
売払い数量は両区分あわせて30万トン程度を予定する。応募者は区分の指定は可能だが、内訳の指定はできない仕組みとなっている。
応募資格は、次の3要件をすべて満たす企業・団体に限定される。
第一に、日本に拠点を有していること。第二に、J-クレジット登録簿システムにおいて保有口座を開設済みであること。第三に、買い取ったJ-クレジットの活用方法が、温対法(地球温暖化対策推進法)の調整後排出量・調整後排出係数の報告、カーボン・オフセットなどJ-クレジット制度上認められた用途であるか、または最終利用者への転売を目的とすることである。
今回の公募で最も注目すべき点は、取引プラットフォーム上での流通計画が応募の必須要件として組み込まれたことである。
応募者は、買取り希望数量の6割以上を取引プラットフォーム上で取引する計画書を提出する必要があり、6割に満たない計画は審査対象外となる。さらに、過去の売払いで採択された事業者については、採択数量の6割以上を取引プラットフォーム上で実際に売却した実績があることが応募要件として課される。
応募は1事業者あたり1件までで、再エネ発電区分と省エネ区分の双方への応募が必要となる。いずれか一方の区分のみの応募は認められない。最低単価は公募要領に明記される予定で、採択額には消費税10%が課される。
経済産業省が示した審査基準は、J-クレジット制度を通じた炭素価格の形成機能の強化を強く意識した構成となっている。
具体的な評価項目は次の5点である。
第一に、J-クレジットの売買実績の有無。相対取引による実績よりも取引プラットフォーム上での取引実績を高く評価すると明記されている。
第二に、買取り希望量に占める取引見込量の割合。
第三に、過去に買い取ったJ-クレジットの取引プラットフォーム上での売却実績。
第四に、価格形成に必要な体制の整備状況。
第五に、買取単価の水準である。買取単価が高いほど評価されるという審査方針は、入札価格の高水準化を促し、市場全体のJ-クレジット価格水準の引き上げに作用する設計となっている。
公募要領の詳細は2026年5月中下旬以降に公開され、その公開をもって公募開始となる。公募期間は20日から1か月程度を想定している。なお、公募内容の詳細は今後変更される可能性がある旨が公表されている。
経済産業省は今回の予告において、保有J-クレジットを単に処分するのではなく、炭素価格の形成インフラとしての取引プラットフォーム機能を育成する意図を明確に打ち出している。
GX-ETSが本格稼働期を迎える中、J-クレジットを含む国内炭素市場全体の流動性と価格透明性の確保は政策上の最重要課題のひとつとなっており、買取後6割以上の取引プラットフォーム流通義務、および過去実績の応募要件化は、トレーダーや専門事業者の市場参加を一段と促す制度設計と評価できる。
日本企業にとっての含意は二段階で捉える必要がある。
自社のカーボン・オフセットや温対法報告に向けたJ-クレジット調達戦略に加え、市場流動性の向上を踏まえたカーボンクレジット価格の動向把握がこれまで以上に重要となる。とりわけハード・トゥ・アベイト業種では、調達コスト変動リスクを織り込んだ中期的な価格ヘッジ戦略の検討が現実的な経営課題となりつつある。
参考:https://www.meti.go.jp/information/publicoffer/kobo_yokoku/2026/ky260424001.html