カリフォルニア州のロブ・ボンタ(Rob Bonta)司法長官、ギャビン・ニューサム(Gavin Newsom)知事、および州大気資源局(CARB)は2026年6月22日、米環境保護庁(EPA)をコロンビア特別区連邦地裁に提訴した。EPAが大気浄化法(Clean Air Act)に基づき州に認めてきた4件の適用除外(waiver)を「規則(rule)」へ再分類し、議会審査法(Congressional Review Act、CRA)に基づいて議会へ送付した行為の取り消しを求める。
問題となった4件は、CARBの2008年GHG排出基準、2012年の乗用車排出基準(ACC I)、2022年に復活させたACC Iの一部、小型オフロードエンジン規則の改正である。いずれも州独自の車両・エンジン排出基準を支え、自動車メーカーにEV販売比率の引き上げを義務づける根拠となってきた。
州側は、適用除外は大気浄化法の制定から50年以上にわたり一貫して「命令(order)」として扱われ、CRAの対象外だったと主張する。今回の再分類は行政手続法(Administrative Procedure Act、APA)に反する越権行為であり、適用除外を規則に変える試みだと述べた。EPAはこれまで75件超の適用除外を州に認めてきた経緯がある。
EPAの動きは突発的なものではない。2025年2月にもEPAは3件の適用除外を規則と再分類して議会へ送付し、州はすでに提訴している。今回の4件はその延長線上にある。
背景には、トランプ政権による気候・車両規制の後退がある。EPAは自動車メーカーがガソリン車を販売しやすくする規則を導入し、連邦燃費基準の緩和も進めている。2035年までに新車のガソリン車販売を段階的に禁止する州規則については、トヨタ(Toyota)やゼネラルモーターズ(General Motors、GM)などの働きかけを受け、議会がCRAで州の権限を撤回した経緯がある。
一方でEPA側は、過去の民主党政権下で認められた適用除外は本来CRAに基づき議会へ送付すべきだったとの立場をとる。適用除外を規則とみなせるかどうかは、CRAの解釈をめぐる係争点として残る。
本件は単独の車両規制をめぐる争いというより、連邦政府が州の気候規制権限を手続き面から削る動きの一環として位置づけられる。長年「命令」として扱われてきた適用除外を規則と読み替え、CRAの撤回ルートに乗せる手法が、2025年以降くり返し用いられている点が論点となる。
司法判断が確定するまで規制の前提が揺れ続けることは、車両分野にとどまらず、気候関連の事業計画や投資判断における予見可能性を左右する。米国の気候規制が政権交代のたびに振れる構図が、当面の不確実性として残る。