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カーボンニュートラルとは?詳しくてわかりやすい用語解説|What Is Carbon Neutral?

2025.01.01 更新 2026.07.04 読了 約12分
カーボンニュートラルとは?詳しくてわかりやすい用語解説|What Is Carbon Neutral?

「この製品は、カーボンニュートラルである」。近年、企業活動や製品、イベントなど、社会のあらゆる場面でこの言葉を目にするようになった。これは気候変動対策への意識の高まりを示すポジティブな動きである。

しかし、その言葉の裏側にはどのような努力と計算が存在するのだろうか。本稿では、カーボンニュートラルの正確な意味、それを達成するための厳格なプロセス、そしてしばしば混同される「ネットゼロ」との決定的な違いについて解説する。要点だけを短時間で確認したい場合は、カーボンニュートラルの1文定義も参照してほしい。

カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルを一言で表現すると、「ある主体(企業・製品・イベントなど)の活動から排出される温室効果ガスの量を、他の場所での削減・吸収量で相殺(オフセット)し、合計で実質的にゼロにすること」を指す。

その実現は、以下の数式で表される。

排出量 −(自社での削減量 + カーボンクレジットによるオフセット量)= 0

ここで極めて重要な点は、信頼できるカーボンニュートラルとは、単に「お金を払ってカーボンクレジットを購入すればよい」というものではないということだ。

国際的なベストプラクティスでは、算定・削減・オフセットという明確な優先順位(緩和の階層)を踏むことが求められる。

なぜカーボンニュートラルが重要なのか

企業や組織が気候変動対策に取り組む上で、カーボンニュートラルは具体的かつ強力な指標となる。

具体的な行動目標の提示

「排出量を実質ゼロにする」という明確なゴールは、組織全体で気候変動対策に取り組むための強力な動機付けとなる。

ボランタリーカーボンクレジット市場(VCM)の活性化

多くの企業がカーボンニュートラルを目指すことは、ボランタリーカーボンクレジット市場(VCM)におけるクレジット需要の最大の牽引力である。これにより、途上国の排出削減プロジェクトなどへ大規模な民間資金が還流することになる。

消費者・投資家へのアピール

環境に対する責任ある姿勢を示すことは、環境意識の高い消費者やESG投資家からの評価向上に直結する。

信頼できる実現プロセス

カーボンニュートラル」という主張の信頼性は、そのプロセスの厳格性と透明性にかかっている。国際規格ではその具体的な手順が定められており(規格自体の最新動向は後述)、特に以下の3段階を順守する必要がある。

① 排出量の算定

まず、GHGプロトコルなどの国際的な基準に沿って、対象となる活動の温室効果ガス排出量(カーボンフットプリント)を正確に算定する。現状の把握なくして対策はあり得ない。

② 排出量の削減

次に、算定結果に基づき、省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーへの切り替えなど、自らの努力で排出量を削減するための計画を策定し実行する。この「自社努力による削減」こそが、最も優先されるべき行動である。

③ オフセット

最大限の削減努力を行ってもなお削減しきれない「残余排出量」に対し、それと同等量の高品質なカーボンクレジットを購入し、登録簿(レジストリ)上で「無効化(リタイアメント)」する。使用するクレジットは、信頼できる基準で認証され、第三者検証を経た「エクスポスト(事後)クレジット」でなければならない。

国際規格の動向

カーボンニュートラル」を検証可能な形で主張するための国際規格は、更新が進んでいる。長らく英国規格協会(BSI)の「PAS 2060」が事実上の標準として広く使われてきたが、BSIはPAS 2060に基づく新規検証の販売を2024年1月1日付で終了し、既存案件についても2025年12月31日までにすべての検証意見の発行を完了した。現在BSIは、2023年にCOP28で導入された国際規格「ISO 14068-1:2023」を、カーボンニュートラリティ認証の標準として提供している。ISO 14068-1は、算定・削減・オフセットという優先順位や第三者検証の必要性といったPAS 2060の考え方を引き継ぎつつ、あいまいな主張やグリーンウォッシュを防ぐための要件をより厳格化した点が特徴である。

ネットゼロ」との決定的な違い

カーボンニュートラル」と「ネットゼロ」は同義として扱われがちだが、目指す「レベル」と「範囲」において決定的な違いがある。

項目 カーボンニュートラル ネットゼロ
目標の定義 排出量をオフセットで「相殺」し、実質ゼロにする バリューチェーン全体で排出量を90%以上削減し、残余排出を除去で中和する
対象範囲 Scope 1Scope 2が中心(Scope 3は部分的な場合も) Scope 1, 2, 3の全てが対象
オフセットの種類 削減・回避クレジット、除去クレジットの両方が利用可能 除去(Removal)クレジットのみ利用可能
時間軸 短期的な目標(単年度)として達成可能 科学的根拠に基づく、長期的な最終到達点

簡単に言えば、カーボンニュートラルが「毎年の努力で排出と吸収のバランスを取る状態」であるのに対し、ネットゼロは「そもそも排出をほぼゼロに近いレベルまでなくしてしまう」という、より野心的で長期的な最終目標である。事実、SBTi(Science Based Targets initiative)の企業向けネットゼロ基準でも、バリューチェーン全体で少なくとも90%の絶対量削減を行った上で、残る10%以下の残余排出のみを恒久的な除去クレジットで中和することが求められている。

国内外の動向

国内:日本政府は2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、2030年度には温室効果ガスを2013年度比46%削減する中間目標を掲げている。この実現に向け、2023年10月には「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定され、産業・エネルギー両面からの移行支援が進められている。国内の自主的なクレジット制度としてはJ-クレジット制度が中心的な役割を担っている。

海外:EUでは、オフセットに基づく「カーボンニュートラル」等の製品表示を規制する「Empowering Consumers for the Green Transition」指令(ECGT指令)が2026年9月27日から適用される見込みで、加盟国は2026年3月27日までに国内法制化を進めてきた。同指令の下では、カーボンクレジットの購入のみを根拠とした製品単位の「カーボンニュートラル」表示は、EU域内で事実上使えなくなる方向にある。こうした規制強化は、前述のISO 14068-1への移行とあわせて、主張の裏付けとなるプロセスの厳格性・透明性を企業に求める世界的な潮流を示している。

メリットと課題

メリット

迅速なアクション
企業や製品単位で、比較的早期に達成可能な目標を設定できる。

資金循環への貢献
カーボンクレジット市場を通じて、即時の気候変動ファイナンスに貢献できる。

課題とリスク

グリーンウォッシュのリスク
自社での削減努力を怠り、安価で低品質なクレジットの大量購入だけで「カーボンニュートラル」を謳う行為は、グリーンウォッシングとして厳しい批判の対象となる。前述のEU ECGT指令のように、こうした主張自体を規制する動きも強まっている。

定義の混同
言葉の定義が一般に誤解され、企業の真の努力レベルが正しく伝わらない可能性がある。

品質への依存
主張の信頼性が、利用するカーボンクレジットの品質に完全に依存する。低品質なクレジットの購入は、削減努力そのものを無意味にしかねない。こうしたリスクを避けるには、購入前にクレジットの供給元(サプライヤー)やプロジェクトの品質を見極めることが欠かせない。専門的な評価情報を必要とする企業担当者向けには、CDR PROのようなクレジット品質評価サービスも活用されている。

まとめ

本稿では、カーボンニュートラルが「①算定 → ②削減 → ③オフセット」という厳格なプロセスを経て達成されるべき目標であることを解説した。

  • カーボンニュートラルとは、排出量を高品質なクレジットでオフセットし、実質ゼロにすることである。
  • 必ず、自社での排出削減努力が最優先されるべきである(緩和の階層)。
  • ネットゼロ」とは、対象範囲と野心のレベルが異なる、より長期的な目標である。
  • 検証の枠組みはPAS 2060からISO 14068-1:2023へと移行しており、EUでは主張自体への規制も強化されつつある。

カーボンニュートラル」という言葉の価値は、その手軽さではなく、背景にある企業の真摯な削減努力と、高品質なオフセットへのこだわりによって決まる。今後、企業の主張に対する社会の目はますます厳しくなり、そのプロセス全体の透明性と実効性が、これまで以上に問われることになるだろう。

In English: What Is Carbon Neutral?

“Carbon neutral” means that the greenhouse gas emissions generated by an entity’s activities (a company, product, or event) are balanced out — offset — by an equivalent amount of emission reductions or removals achieved elsewhere, so that the net total is effectively zero.

Achieving carbon neutrality credibly is not simply a matter of buying carbon credits. International best practice requires following a clear mitigation hierarchy: first measure emissions (using standards such as the GHG Protocol), then reduce them as much as possible through efficiency gains and renewable energy, and only offset the remaining “residual emissions” with high-quality, third-party-verified ex-post credits that are retired in a registry.

For years, BSI’s PAS 2060 was the de facto international specification for verifiable carbon-neutrality claims. BSI stopped selling new PAS 2060 verifications from January 1, 2024, completed all outstanding verification opinions by December 31, 2025, and now offers ISO 14068-1:2023 — introduced at COP28 — as its standard for carbon-neutrality certification. ISO 14068-1 keeps PAS 2060’s core principles (calculate, reduce, then offset; independent verification) while tightening requirements to curb vague claims and greenwashing.

Carbon neutral is often confused with “net zero,” but the two differ in ambition and scope. Carbon neutrality typically centers on Scope 1 and 2 emissions, can be achieved on a single-year basis, and allows reduction, avoidance, or removal credits. Net zero, by contrast, covers Scope 1, 2, and 3, requires at least a 90% absolute reduction across the value chain (per the SBTi Corporate Net-Zero Standard) before neutralizing only the residual (10% or less) with permanent removal credits, and represents a long-term, science-based end state.

Regulatory scrutiny is intensifying: from September 27, 2026, the EU’s Empowering Consumers for the Green Transition (ECGT) Directive will effectively prohibit offset-based “carbon neutral” product claims within the EU. Japan, meanwhile, declared a 2050 carbon-neutrality goal in October 2020, targets a 46% cut in GHG emissions by FY2030 (versus FY2013), and advances this transition through its GX (Green Transformation) policy adopted in October 2023.

The value of a “carbon neutral” claim ultimately rests not on how easily it can be made, but on the rigor of a company’s own emission-reduction efforts and the quality of the credits used to offset what remains.

カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。