インドのカーボンクレジット開発企業オルト・カーボン(Alt Carbon)は、ERWによる検証済みCDRクレジット9,566トンを発行したと発表した。累積のERW発行量で世界最大となる。
今回のカーボンクレジットは認定VVBの第三者検証を経て、アイソメトリック(Isometric)のレジストリ上で発行された。除去対象は、インド・ダージリンおよびタライ地域の茶園、水田、農地ネットワークにまたがる。
多業種に広がる買い手層
引き渡し先には、ウォーターシェッド(Watershed)経由のフロンティア(Frontier)連合が含まれる。構成企業はストライプ(Stripe)、グーグル(Google)、ショッピファイ(Shopify)、マッチグループ(Match Group)である。
このほか、カーボンクレジット調達プラットフォームのCEEZER、サウスポール(South Pole)、三菱主導のNextGen CDRなどが名を連ねた。
買い手の業種はテクノロジー、金融、海運、商品取引にまたがる。Alt Carbonはこれを、ERWを科学的に厳格かつ拡張可能な高品質CDR手法とみなす市場認識の広がりと位置づけている。
発行を支える科学インフラ
Alt Carbonの発行能力は、過去2年で構築した分析インフラに支えられている。同社はバンガロールのインド理科大学院(IISc)構内のShonku Labsと、ヒマラヤ山麓のダージリン気候アクションラボ(D-CAL)の2拠点を持ち、年間10万サンプルの処理能力を備える。これまでに2万件超を分析してきた。
科学チームは8週間で1万2,000サンプルをICP-OESで分析した。これは欧州連合が25カ国・数年がかりで約2万サンプルを収集した大規模土壌調査LUCASの60%に相当する規模である。
検証プロトコル上は求められていないものの、同社は一部サンプルを独立した外部ラボへ送付し、自社の分析値を照合している。本件のカーボンクレジットは1万年超の固定を前提とする除去系CDRに分類される。
デリバリー実績という論点
CDR市場の取引額は過去3年で3億ドル(約480億円)から120億ドル(約1兆9,200億円)超へ拡大した。
一方で、検証され実際に引き渡されたトンは依然として例外的である。
オフテイク契約と実デリバリーの乖離は、ボランタリーカーボンクレジット市場における根強い信頼性の課題となっている。Alt Carbonは今回を3回連続のデリバリーであり、かつ初の多業種・多地域ポートフォリオ向け発行と位置づけ、このギャップへの直接的な回答だと主張している。
編集部の視点
本件は、ERWがパイロット段階から本格的なデリバリー段階へ移行しつつあることを示す事例として位置づけられる。
アイソメトリックが単一案件として認証した過去最大規模であり、厳格なMRVと第三者検証を経たカーボンクレジットが多業種の買い手へ同時に引き渡された点に構造的な意味がある。除去系CDRの中でも、自然由来とは性質を異にする長期固定型の手法が、実需に裏打ちされた供給力を示した。
ERWが量と質を両立した供給源として定着するかは、今回示された分析スループットと検証体制を、コストを抑えつつ反復できるかにかかっている。
参考:https://altcarbon.com/press-releases/alt-carbon-makes-worlds-largest-erw-issuance-removing-nearly-10-000t-of-co2
