サンフランシスコを拠点とするバイオテクノロジーのスタートアップであるルビ(Rubi Laboratories)は、二酸化炭素を産業資材に変換する独自の炭素回収・利用(CCU)技術の商業化に向け、750万ドル(約11億2,500万円)の新たな資金調達を実施した。
あわせて、6,000万ドル(約90億円)を超えるオフテイク契約(製品引取合意)を締結したことを発表した。
今回の投資ラウンドは、エーピー・ベンチャーズ(AP Ventures)とエフエイチ・ワン・インベストメンツ(FH One Investments)が共同でリードし、エイチ・アンド・エム・グループ(H&M Group)やタリス・キャピタル(Talis Capital)などの投資家が参加した。
ルビの基幹技術は、細胞を使用しない「無細胞酵素プロセス(Cell-free enzymatic process)」に基づいている。このプロセスでは、独自に設計された酵素を触媒として使用し、回収されたCO2を直接、レーヨンやビスコースの原料となるセルロースなどの複雑なポリマーに変換する。
従来の製造方法との主な違いは以下の通りである。
ルビはこれまでに、エイチ・アンド・エム(H&M)、パタゴニア(Patagonia)、ウォルマート(Walmart)を含む15以上のパートナー企業と素材の性能試験やパイロットプロジェクトを実施してきた。
今回調達した資金は、生産システムを産業用のデモンストレーション段階へとスケールアップするために使用される 。同社は、年間数十トン規模の素材生産を目指しており、将来的にはアパレル業界だけでなく、消費財や航空宇宙産業など、セルロースを必要とするあらゆる産業へのプラットフォーム提供を計画している。
現在、ファッション業界は国際航空や海運の合計を上回る炭素汚染を生み出しているという課題を抱えている。炭素除去(CDR)への関心が高まる中、ルビのような炭素回収・利用(CCU)技術は、排出されたCO2を価値ある資源に変えることで、企業のScope3排出量の削減に大きく貢献することが期待されている。
ルビの事例は、CO2を単に「埋設・貯留(CCS)」するのではなく、高付加価値な「素材(CCU)」として再利用するモデルの経済合理性を示しています。
特に繊維産業が盛んなアジア圏や、排出規制が強化される日本市場において、このようなサプライチェーン内での炭素循環モデルは、今後の脱炭素経営の核となるでしょう。