スウェーデン・エネルギー庁(Energimyndigheten)は2026年3月16日、大気中のCO2を回収・固定するネガティブエミッション技術の確立に向け、2つの新たな資金援助公募を開始した。
同国の産業脱炭素化支援プログラム「インダストリー・クライヴェット(Industriklivet)」の一環として実施されるもので、総額3億1,500万スウェーデンクローナ(約53億6,000万円)を投じ、商用化段階のプロジェクトから基礎研究まで幅広く支援する。
今回の公募は、技術成熟度に応じた2つのカテゴリーで構成されている。
バイオエネルギー炭素回収・貯留(BECCS)や直接空気回収(DAC)など、大気中または生物由来のCO2を回収し、地質学的に貯留する技術を対象とする。
大学・研究機関・企業による基礎研究および応用研究を対象とする。
特筆すべきは、今回の公募においてバイオ炭および炭素回収・利用(CCU)が明示的に対象外とされた点である。現時点での予算制約のもと、より永続性の高い地中貯留を伴うCDR技術にリソースを集中させるスウェーデン政府の明確な優先順位付けを示している。これは高品質なCDRカーボンクレジットの創出基盤構築に向けた国家戦略と整合するものである。
スウェーデン政府は、2045年までのネットゼロ達成、およびそれ以降のカーボンネガティブ(排出量を上回るCO2除去)の実現を法的義務として掲げている。今回の公募はその技術基盤整備の核心を担う。
スウェーデンはこれまでも「インダストリー・クライヴェット」を通じて、鉄鋼大手エスエスエービー(SSAB)による水素還元製鉄プロジェクト「ハイブリット(HYBRIT)」など、世界をリードする脱炭素プロジェクトを支援してきた。
また、同国はBECCSに特化した逆オークション制度(政府がCDR量を直接買い取る仕組み)の導入も並行して進めており、今回の公募による設備投資支援と逆オークションによる運用支援を組み合わせることで、カーボンクレジットの供給サイドを強力に後押しする体制を整えている。
スウェーデンがBECCSとDACに資源を集中させる戦略は、将来の欧州カーボンクレジット市場において「高品質・高永続性」クレジットの供給国としての地位を盤石にする狙いがある。