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ギリシャ初の炭素除去拠点へ前進 ケント社が「プリノスCO2貯留プロジェクト」のFEEDを受注

2026.03.24 読了 約4分
ギリシャ初の炭素除去拠点へ前進 ケント社が「プリノスCO2貯留プロジェクト」のFEEDを受注
出典:kentplc

英エンジニアリング大手のケント(Kent)は2026年3月13日、ギリシャ北部プリノスにおける炭素回収・貯留(CCS)開発の基本設計(FEED)契約を、エネルギー企業エナジアン(Energean)の子会社エンアース(EnEarth)から受注したと発表した。

本プロジェクトは地中海地域で初めて環境許可および貯留許可を取得したCO2専用貯留拠点であり、2029年までに年間最大280万トンの液化CO2圧入能力を確保する計画である。産業部門の脱炭素化を支える欧州の炭素回収・貯留(CCS)インフラ整備が、具体的な設計フェーズへと移行した。

バリューチェーン全体をカバーする技術的範囲

今回のFEED契約により、ケントは液化CO2の受け入れから調整、輸送、洋上圧入に至る一連のハンドリング施設の設計を担当する。計画では、域内外の排出源から船舶輸送された液化CO2を、カバラ近郊の陸上施設「シグマ(Sigma)」プラントで受け入れ、一時貯蔵した後に調整・加圧のうえ、海底パイプラインを通じて洋上の「CO2圧入・水産出(COIWP)」プラットフォームへ送る。最終的には、既存の炭化水素貯留層の下位に位置するプリノス帯水層に圧入し、CO2を永続的に封じ込める。

ケントのUKエンジニアリングサービス担当副社長ポール・ウェットン(Paul Wetton)氏は「プリノスは欧州で最も戦略的に重要な炭素貯留開発の一つであり、ギリシャおよびEU全域における大規模産業脱炭素化を可能にする意義深い一歩だ」と述べた。エナジアングループの契約・調達担当グループヘッドであるイオアニス・ポリティス(Ioannis Politis)氏は「炭素回収・貯留(CCS)を持続可能な惑星への移行の礎として推進するというコミットメントを示すものだ」と語った。

油田インフラの「再目的化」

プリノス開発の核心は、1974年に発見されたギリシャ唯一の産油・産ガス田の既存インフラを再活用する点にある。プロジェクトは2段階で進められる。第1段階では既存インフラを改修し年間約100万トンの圧入を開始、第2段階で年間280万トンへ規模を拡張し、約20年間にわたる操業を見込んでいる。新規プラットフォームのゼロから建設ではなく、既存資産の転換によるコスト効率と開発スピードの確保がプロジェクトの競争優位となっている。

EU戦略インフラとしての位置付けと公的資金支援

本プロジェクトは、欧州連合(EU)の「共通利益プロジェクト(PCI)」リストに選定されており、EUの「連結欧州ファシリティ(CEF)」およびギリシャの「復興・回復ファシリティ(RRF)」から多額の公的資金支援を受けている。EU全体の炭素除去(CDR)戦略において、ギリシャ・フランス・イタリアをつなぐ地中海CO2貯留ネットワークの中核ハブとなる見通しだ。同規模のCCSインフラ整備には数億ユーロ(数百億円規模)の投資が必要とされる一方、高品質な除去系カーボンクレジットの創出基盤としてその経済的価値は極めて高い。

高品質カーボンクレジットの供給源としての期待

地中海地域初の本格的な炭素回収・貯留(CCS)拠点として、プリノスプロジェクトはEU ETS対応の域内企業や、ボランタリーカーボンクレジット市場での高耐久性クレジットを必要とするグローバル企業の双方から需要を取り込む可能性を持つ。地質学的貯留による高い永続性と第三者検証に基づく測定・報告・検証(MRV)体制が整えば、コアカーボン原則(CCPs)に適合した除去系カーボンクレジットとして市場での信頼性確保が見込まれる。今後は2020年代後半の本格操業に向けた詳細設計の進捗と、域内排出事業者との長期購入契約(プレパーチェスカーボンクレジット)の締結が焦点となる。

参考:https://kentplc.com/news-insights/kent-awarded-feed-contract-for-prinos

カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。