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温室効果ガス(GHG)とは?わかりやすく解説|What Are Greenhouse Gases?

2025.01.01 更新 2026.07.04 読了 約10分
温室効果ガス(GHG)とは?わかりやすく解説|What Are Greenhouse Gases?

地球が生命にとって快適な温度に保たれているのは、大気中に存在する温室効果ガスが、地球を包む「透明な毛布」のような役割を果たしているためである。しかし、人間活動によってこの毛布が必要以上に厚くなり、地球が過剰に暖められてしまう。これが、地球温暖化の基本的なメカニズムである。

本稿では、全ての気候変動の議論の出発点である「温室効果ガス(Greenhouse Gas, GHG)」について、その正体と種類、GWP(地球温暖化係数)による比較の仕組みを解説するとともに、国内外の最新動向や、カーボンクレジット市場における品質評価との関わりまでを、わかりやすく解説する。

(定義だけを1〜2文で手早く確認したい場合は→ GHGのクイック定義へ)

温室効果ガスとは

温室効果ガスの定義

温室効果ガスとは、一言で言えば「地球の表面から宇宙へ逃げる熱(赤外線)の一部を吸収し、再び地表に戻す(再放射する)性質を持つ、大気中の気体成分」である。

このプロセスは温室効果と呼ばれ、自然な状態では、地球の平均気温を約14℃という生命に適した温度に保つために不可欠である。温室効果が存在しなければ、地球の平均気温は氷点下19℃程度まで下がると考えられており、現在の温暖な気候は温室効果ガスの働きなしには成り立たない。しかし、産業革命以降、人間活動によって大気中の温室効果ガスの濃度が急激に増加したことで、この「毛布」が厚くなりすぎ、地球全体の気温が上昇する地球温暖化が引き起こされている。

なぜGHGの管理が重要なのか

温室効果ガスは、現代の気候変動を理解し、対策を講じる上での、最も基本的なキーワードである。排出源を正確に把握し、削減・除去の進捗を数値で管理することが、あらゆる気候変動対策の出発点となる。

地球温暖化の主要因

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、第6次評価報告書(AR6)において、近年の温暖化が人間活動による温室効果ガスの増加に起因することを、科学的に「疑う余地がない」と結論付けている。GHGの排出量を削減することが、温暖化対策の根幹である。

全ての気候変動政策の対象

京都議定書のような初期の国際条約から、パリ協定、各国の法律、そして企業の削減目標に至るまで、全ての気候変動対策は、この温室効果ガスの排出をいかにして減らし、大気中から除去するかに焦点を当てている。

温室効果ガスの種類とGWP(地球温暖化係数)

温室効果ガスには複数の種類があり、それぞれ発生源や温暖化への影響度(温暖化能力)が異なる。この異なるガスの温暖化能力を比較するため、二酸化炭素(CO2)を「1」とした場合の温暖化能力を示す「GWP(地球温暖化係数)」という指標が用いられ、全ての排出量は「CO2換算(CO2e)」という共通の単位で計算される。

京都議定書やパリ協定の下で、国際的に排出量の算定・報告・削減の対象となっているのは、以下の7種類のガスである(2012年のドーハ改正で三フッ化窒素・NF3が追加され、現在の7種類の枠組みとなった)。IPCC第6次評価報告書(AR6)に基づく100年基準のGWPの目安は次のとおりである。

ガス GWP100(AR6・代表値) 主な発生源
二酸化炭素(CO2) 1 化石燃料の燃焼、セメント生産、森林減少
メタン(CH4) 約27〜30 家畜、水田、天然ガス採掘時の漏洩、廃棄物の埋め立て
一酸化二窒素(N2O) 約273 窒素肥料、工業プロセス、燃料の燃焼
HFCs(代表例:HFC-134a) 約1,526 エアコンや冷蔵庫の冷媒
PFCs(代表例:CF4) 約7,380 半導体の製造プロセス
六フッ化硫黄(SF6) 約25,200 電力設備の絶縁ガス
三フッ化窒素(NF3) 約17,400 半導体・液晶パネルの製造プロセス

二酸化炭素(CO2)

最も排出量が多く、温暖化への影響が最大の温室効果ガスである。主に化石燃料(石炭、石油、天然ガス)の燃焼や、セメントの生産、森林減少などによって排出される。

メタン(CH4)

CO2の次に影響の大きなガスである。家畜(牛のゲップなど)や水田、天然ガスの採掘時の漏洩、廃棄物の埋め立てなどから発生する。大気中の寿命はCO2より短いものの、短期的な温室効果は数十倍強力である。

一酸化二窒素(N2O、亜酸化窒素)

主な発生源は、農用地に施用された窒素肥料や、工業プロセス、燃料の燃焼などである。大気中の寿命が非常に長く、温暖化能力もCO2の200倍以上と強力である。

Fガス類(フロンガス類)

自然界には存在しない、人間が作り出した化学物質であり、極めて強力な温室効果を持つ。大気中に数千年以上にわたって留まるものもある。

  • ハイドロフルオロカーボン類(HFCs):主にエアコンや冷蔵庫の冷媒として使用される。
  • パーフルオロカーボン類(PFCs):半導体の製造プロセスなどで使用される。
  • 六フッ化硫黄(SF6):電力設備などで絶縁ガスとして使用される。
  • 三フッ化窒素(NF3):半導体や液晶パネルの製造プロセスで使用される。

国内外の動向

世界の温室効果ガス排出量は増加が続いている。国連環境計画(UNEP)が2025年11月に公表した「排出ギャップ報告書2025」によれば、2024年の世界の温室効果ガス排出量は前年比2.3%増の577億トンCO2eに達し、過去最高を更新した。また、世界気象機関(WMO)の観測データでも、2024年の大気中CO2濃度は観測史上最高を更新し、前年からの増加量も過去最大を記録している。

日本では、2025年2月に地球温暖化対策計画が閣議決定され、2013年度比で2035年度に60%、2040年度に73%の温室効果ガス削減を目指す新たなNDC(国が決定する貢献)が国連気候変動枠組条約(UNFCCC)に提出された。これは、2050年ネットゼロカーボンニュートラル)の実現に向けた直線的な削減経路として位置付けられている。

企業レベルでは、GHGプロトコルに基づき、自社の排出(Scope1,2,3)を算定・開示する取り組みが国際的な標準となりつつあり、投資家や取引先からの開示要請も年々強まっている。

GHGという概念を理解するメリットと課題

メリット

  • 気候変動の根本原因を、科学的に明確に理解できる。
  • 排出源を特定することで、効果的な対策を講じることができる。
  • 「CO2換算」という共通の物差しにより、国や企業、プロジェクトの垣根を越えて、削減努力を比較・評価できる。この共通性は、カーボンクレジットカーボンオフセットのような市場メカニズムが成立する前提にもなっている。

課題

温室効果ガスは無色・無臭で、その影響がすぐには現れないため、問題の緊急性が社会に認識されにくい。

排出が、エネルギー、食料、輸送、工業生産といった、私たちの生活のあらゆる側面に深く組み込まれており、その削減には社会経済システム全体の大きな変革が必要である。

また、GHGの算定範囲や採用するGWPの基準(AR5・AR6のどちらに基づくかなど)が明確にされているかは、カーボンクレジットの品質を見極める上でも重要な視点である。信頼できるクレジット供給者やプロジェクトを選定する際は、対象ガスの範囲や算定方法論の透明性を確認したい。CDR PROでは、こうしたクレジットの品質評価に役立つ情報を提供している(CDR PROについて)。

まとめ

温室効果ガス(GHG)は、地球を暖かく保つ自然の「毛布」でありながら、人間活動によってその濃度が過剰になり、地球温暖化を引き起こしている、気候変動の根本原因である。

GHG排出量の算定・報告は、全ての気候変動対策の出発点であり、この科学的真実に基づき、いかにして迅速かつ公正に、社会経済システム全体を脱炭素化させていくかが、人類に残された最大の課題である。定義だけを手早く確認したい場合は、GHGのクイック定義も参照されたい。

In English: What Are Greenhouse Gases?

The Earth stays warm enough to support life because greenhouse gases (GHGs) in the atmosphere act like a “transparent blanket”: they absorb infrared heat radiating from the surface and re-emit part of it back down. This natural greenhouse effect keeps the planet’s average surface temperature at roughly 14°C; without it, the average would fall to around -19°C. Since the Industrial Revolution, human activity has sharply increased atmospheric GHG concentrations, thickening this “blanket” and driving global warming — a conclusion the IPCC’s Sixth Assessment Report (AR6) calls “unequivocal.”

The Kyoto Protocol and the Paris Agreement track seven gases under international reporting rules: carbon dioxide (CO2), methane (CH4), nitrous oxide (N2O), and four fluorinated gases — HFCs, PFCs, SF6, and NF3 (added via the 2012 Doha Amendment). Because each gas traps heat differently, scientists compare them using Global Warming Potential (GWP) and express all emissions in a common unit, CO2-equivalent (CO2e). Under IPCC AR6, the 100-year GWP is about 27-30 for methane and about 273 for nitrous oxide, while fluorinated gases such as SF6 (~25,200) and NF3 (~17,400) are thousands of times more potent than CO2.

Global GHG emissions continue to rise: the UN Environment Programme’s Emissions Gap Report (November 2025) found that 2024 emissions reached a record 57.7 billion tonnes CO2e, up 2.3% year on year. Japan submitted a new NDC in February 2025 targeting 60% and 73% reductions from FY2013 levels by FY2035 and FY2040 respectively, on a path to net zero by 2050. Because credible carbon credits depend on transparent, well-defined GHG accounting, understanding which gases are counted — and how — also matters when evaluating credit and supplier quality; CDR PRO supports that kind of evaluation.

カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。