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ベトナム、ETS試験運用向け施設別排出枠を正式公表 110施設・2カ年分の割当量が確定

2026.04.02 読了 約3分
ベトナム、ETS試験運用向け施設別排出枠を正式公表 110施設・2カ年分の割当量が確定
出典:イメージ

ベトナム政府は2026年2月9日、排出量取引制度(ETS)の試験導入に向けた施設別温室効果ガス(GHG)排出枠を正式に公表した。

チャン・ホン・ハ(Tran Hong Ha)副首相が署名した決定第263号(Decision No. 263/QD-TTg)に基づき、国内で最も炭素集約度の高い110施設に対して2025年・2026年の2カ年分の具体的な排出上限が設定され、アジア新興国のコンプライアンスカーボンクレジット市場整備において大きな一歩となる。

発電・セメント・鉄鋼の3セクターをカバー

今回の試験プログラムは、火力発電・セメント製造・鉄鋼生産の3分野にわたる110施設を対象とする。内訳は火力発電34発電所、セメント製造51施設、鉄鋼生産25施設である。

割り当てられた排出枠の総量は、2025年が2億4,308万トン(CO2e)、2026年が2億6,839万トン(CO2e)となっており、経済成長に伴う排出増を織り込んだ設計となっている。

2025年の個別施設割当量では、フォルモサ・ハティン鉄鋼(Formosa Ha Tinh Steel Corporation)が1,367万トンと最大規模を占める。次いでAESベトナム(AES Vietnam)が運営するモン・ドゥオン2火力発電所(Mong Duong 2 Thermal Power)が1,219万トンとなっており、鉄鋼セクター全体では2025年に計3,100万トンが配分される。

無償配布から競売へ

今回の排出枠公表は、ベトナムが2050年ネットゼロ目標の達成に向けて歩みを進める上での重要なマイルストーンと位置付けられる。制度設計の主要な特徴は以下のとおりである。

試験段階(2026〜2028年)では、各施設は生産量当たりの排出強度に基づくベンチマーク方式により、排出枠を無償で受け取る。本格運用(2029年以降)では、排出枠のオークション(競売)メカニズムが導入され、より幅広い市場参加が可能となる予定だ。

カーボンクレジットによるオフセット規定も設けられており、企業は国内外のプロジェクトで発行された適格なカーボンクレジットを活用することで、排出枠不足分の最大30%を補完できる。

レジストリ(登録簿)と取引プラットフォームについては、国家レジストリの整備が最終段階にあり、ハノイ証券取引所が公式取引の場として機能する見通しだ。取引開始は2026年末を目標としている。

農業環境省が主導

制度の管轄とレジストリ管理は農業環境省(MAE:旧・天然資源環境省)が主導する。エネルギー・鉄鋼分野の実施監督は工業貿易省、建設分野は建設省がそれぞれ担当する。

ベトナムETSの試験運用開始は、東南アジア新興国における排出量取引制度の本格展開を示す先例として注目に値する。

カーボンクレジットによるオフセットを排出枠不足の30%まで認めた点は、ボランタリーカーボンクレジット市場との接続性を意識した設計であり、将来的にはパリ協定6条の枠組みを通じた二国間クレジット制度(JCM)との連携可能性も排除できない。

日本企業にとっては、ベトナム現地法人や調達先(Scope3)における排出管理見直しの契機となるとともに、同国でのカーボンクレジット創出・調達戦略の再検討を促す動きとして捉えるべきである。

参考:https://vanban.chinhphu.vn/?pageid=27160&docid=216923

カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。