グレート・プレインズ・インスティテュート(Great Plains Institute、GPI)は2026年4月、米国全土を対象に天然ガス火力発電と炭素回収・貯留(CCS)を組み合わせたNG+CCSの立地適合性を可視化する「Atlas of Natural Gas Power with Carbon Capture and Storage(NG+CCSアトラス)」を公開した。
AIとデータセンターの急拡大による電力需要増と、脱炭素要請の両立を迫られる米国エネルギー計画の早期スクリーニング・ツールとして位置づけられる。
米国の電力消費は数十年にわたり横ばいで推移してきたが、今後は急増局面に転じる。アメリカン・クリーン・パワー協会(American Clean Power Association)の調査によれば、2040年までに電力需要は35〜50%増加するとの予測が示されている。主要因はAI、データセンター、および産業・運輸の電化である。
天然ガスは現在、米国の発電電力量の約40%を供給しており、新設データセンターのオンサイト発電源としての活用も拡大している。これに炭素回収・貯留(CCS)を組み合わせることで、調整力のある安定電源(dispatchable power)を維持しつつ排出を削減する経路が現実味を帯びてきた。
アトラスは、全米を対象とした多基準意思決定分析(Multi-Criteria Decision Analysis、MCDA)を採用し、以下の要素を統合評価する。すなわち、天然ガス資源へのアクセス、CO2貯留サイトの有無、既存インフラ、土地・水資源、および需要中心地への近接性である。
評価は以下の4つの導入シナリオで実施されている。
分析の結果、特にメキシコ湾岸、西テキサス州、オクラホマ州、中西部の一部で広範な中〜高適合エリアが特定された。具体的には、約5万4,000平方キロメートルが「高適合」、約230万平方キロメートルが「中〜高適合」と分類された。
この結果は、CO2貯留サイトへのアクセスがNG+CCS導入の決定的要因であることを示しており、貯留適地から離れた地域ではCO2輸送インフラ(パイプライン等)の整備が大規模展開の鍵となる。
GPIで産業イノベーション・炭素管理担当バイスプレジデントを務めるパトリス・ラルム(Patrice Lahlum)は、「電力需要が急速に高まるなか、信頼性と手頃な価格を確保しつつ排出削減も求められている。このようなツールは、データ・インフラ実態・地域コンテキストに根ざした最適配置の意思決定を支援する」と述べた。
アトラスは個別プロジェクトの立地決定ツールではなく、あくまで初期スクリーニング段階で有望地域を絞り込むための資料である。実際のプロジェクト開発では、許認可、土地・地下空隙(pore space)の所有権、地域コミュニティとの対話など、より詳細な検討が不可欠となる。
GPIは別途、炭素管理の意思決定支援ツール「Decision Support Tool」も提供しており、共有データに基づく包摂的な立地判断を支援する。アトラスおよびインタラクティブマップは「carboncaptureready.betterenergy.org」で公開されている。
米国ではIRA(インフレ抑制法)の45Q税額控除がCCSの経済性を大きく押し上げており、ガス火力+CCSの実装機運は急速に高まっている。今回のアトラスは、AI・データセンター由来の電力需要急増という産業現実と、脱炭素要請を統合的に整理した点で、政策当局・電力会社・データセンター事業者・投資家の意思決定における共通参照資料となる可能性がある。