英国スコットランド林業局(Scottish Forestry)が運営する林業系ボランタリーカーボン基準「ウッドランドカーボンコード(Woodland Carbon Code)」が、世界で初めて政府運営のカーボン基準としてインテグリティ・カウンシル・フォー・ザ・ボランタリーカーボンマーケット(ICVCM)による本審査(Full Assessment)に移行したと、2026年3月23日に発表された。
ICVCMはボランタリーカーボンクレジット市場の健全性を担保するための独立非営利ガバナンス機関であり、カーボンクレジット基準に対してコアカーボン原則(CCPs)への適合性を評価する。コアカーボン原則はカーボンクレジットの透明性・完全性・信頼性に関するグローバルな閾値として機能し、購入企業・投資家・土地所有者に対する品質保証として広く参照されている。
今回、ウッドランドカーボンコードは審査プロセス第一段階である「完全性確認(Completeness Check)」を通過した。これはICVCMがコアカーボン原則アセスメントフレームワークに基づく本評価を実施するに足る証拠・詳細が申請書類に含まれていると判断されたことを意味する。今後約1年をかけて本審査が進められる予定だ。
ウッドランドカーボンコードは、新規造林によって創出される高品質なカーボンクレジットの要件を定める。企業は自社では削減困難な温室効果ガス(GHG)排出量のカーボンオフセットとして、同コードに基づくカーボンクレジットを活用できる。
ICVCMの審査基準は永続性の確保と明確な所有権を担保するための法的メカニズムの整備を要求する点が特徴的であり、いずれもカーボンクレジットの品質評価において重要な要素だ。コードはまた地域コミュニティへの便益共有や農林業の統合、小規模農地・スコットランドのクロフト(croft:小規模農地)へのアクセシビリティ向上など、コベネフィット(Co-benefit)の創出も重視している。
2011年の制度創設以来、ウッドランドカーボンコードは英国全土で43,000ヘクタールの新規造林を支援してきた(スコットランドだけで36,500ヘクタール以上)。これら造林プロジェクトはライフサイクル全体を通じてCO2換算1,480万トン以上の炭素隔離が見込まれている。
英国スコットランド農村担当閣僚マイリ・ゴゴン(Mairi Gougeon)は「ウッドランドカーボンコードとウッドランドカーボン市場の誠実性において、世界水準の基準を確立するための重要なマイルストーン」と評価した。スコティッシュ・フォレストリー経済・ウッドランドカーボンコード部長のパット・スノードン(Pat Snowdon)博士も「誠実性・透明性・科学主導の基準へのコミットメントの明確な認知」と述べ、高品質ネイチャーマーケットにおける英国のリーダーシップ強化への期待を示した。
現時点でコアカーボン原則に適格(CCP-Eligible)と認定されたカーボンクレジット・プログラムは、ウッドランドカーボンコードを除いて世界で9件のみとなっている。ICVCMの認定取得は、ボランタリーカーボンクレジット市場におけるグリーンウォッシング批判を回避し、高品質・高信頼性のカーボンクレジットであることを示す最高水準の証明として位置づけられている。
英国政府が直接運営する林業系カーボン基準のICVCM本審査入りは、日本の企業・政策担当者にとっても無関係ではない。日本のJ-クレジット制度は現在ICVCM審査対象外だが、カーボンクレジットの国際流通性や信頼性に関して国際的な評価軸が確立されつつある中、政府主導の基準においても第三者検証・国際規格対応が求められる時代が到来しつつある。Jブルークレジットを含む日本の自然由来カーボンクレジットが国際市場で競争力を持つためにも、コアカーボン原則への適合検討は中長期的な課題として浮上してくるだろう。
参考:https://www.woodlandcarboncode.org.uk/news-events/world-first-woodland-carbon-code