三ッ輪ホールディングスは、三重県尾鷲市との継続的な官民共創の取り組みが評価され、2026年3月に紺綬褒章を受章した。企業版ふるさと納税を起点とし、ゼロカーボンシティの実現を目指す同市との長期パートナーシップが国から正式に評価された形となる。
同社は2022年3月に尾鷲市が宣言したゼロカーボンシティ宣言を機に、同市との本格的な連携を開始した。企業版ふるさと納税制度を入口に、単なる資金提供にとどまらず、出資会社であるパラミタ(paramita)を通じた現場関与を含め、脱炭素という長期的社会課題への継続的なコミットメントを重ねてきた点が評価の核心にある。
今回の受章を象徴する取り組みが、尾鷲市内で展開する「みんなの森」の整備活動である。尾鷲市は三重県南部に位置し、年間降水量が日本有数の多雨地帯として知られる。豊富な降水に育まれた人工・天然林は、CO2吸収源としての高い潜在性を持つ。
同活動は、行政・企業・市民が同一の現場に立ち、森林整備という具体的な行動を通じて環境・生活・経済を接続する点で、自然に基づく解決策(NbS)の地域実装事例として注目に値する。カーボンクレジット市場の観点からは、整備された森林はJ-クレジット制度における吸収系プロジェクトの対象となりうる。尾鷲市の森林資源が将来的に自然由来カーボンクレジットの創出基盤となる可能性を、今回の取り組みは示唆している。
三ッ輪ホールディングスは1940年の創業以来、「ゆたかな地域づくり」を経営理念に掲げてきた。今回の受章を契機に、同市とのパートナーシップをさらに深化させ、脱炭素を軸とした地域共創の社会実装を推進する方針を示している。
また、今回の受章を記念し、尾鷲市長・加藤千速氏と代表取締役社長・尾日向竹信による特別対談が実施された。「脱炭素と次世代教育」をテーマに、両者が描く地域の将来像が語られている。
日本国内において企業と自治体が協働でゼロカーボンシティの実現に取り組む事例は増加しているが、その多くは再生可能エネルギー導入や省エネに偏りがちである。三ッ輪ホールディングスと尾鷲市の連携は、森林整備というNbSアプローチを官民共創の中核に置いた点で異質だ。
J-クレジット制度の吸収系方法論が整備されるなか、豊かな森林資源を持つ地方自治体と都市部企業が連携して自然由来カーボンクレジットを創出するスキームは、GX-ETS時代における「地産地消型カーボンクレジット」の一モデルとなりうる。企業のScope3削減やカーボンニュートラル宣言の信頼性向上にも直結する取り組みとして、今後の展開に注目したい。