ANAは2026年6月18日、SAFの活用を通じて航空輸送のCO2削減に取り組む「SAF Flight Initiative」に、個人向けの「パーソナル・プログラム」を新設した。従来の法人およびカーゴ向けに加え、個人がフライトのCO2排出量に応じてSAFの環境価値を購入できる。国内航空会社が個人向けにSAFの環境価値を販売するのは初の試みとなる。
プログラムの運営では、ノルウェーのチューズ(Chooose AS)と提携した。同社のプラットフォーム上で、フライトに伴うCO2排出量の可視化から環境価値の購入までを一括して行う。
購入者は、フライトのCO2排出量に応じたSAFの環境価値を購入する。価格は路線、搭乗クラス、購入割合に応じて算出され、手数料を含む。
支払われた代金は、SAFの活用拡大の支援に充てられる。決済完了後には、CO2削減量を明記した購入証明書がチューズから発行される。
本プログラムで取引されるのは、SAFの環境価値である。カーボンクレジットでもカーボンオフセットでもない点が、スキーム上の要点となる。
SAFの環境価値とは、SAFが従来のジェット燃料に対して持つライフサイクル排出削減分(約80%)を、物理的な燃料供給と切り離して購入者に帰属させるものである。燃料そのものの引き渡しを伴わず環境属性のみを移転する、ブックアンドクレイム(book-and-claim)方式である。
カーボンクレジットが外部プロジェクトの排出削減・除去を認証のうえクレジット化し、リタイアメントを通じてオフセットに用いるのに対し、SAFの環境価値の購入は航空セクター内の燃料転換を金銭的に支える。バリューチェーン内の脱炭素支援であり、カーボンインセッティングに近い性格を持つ。
本件はカーボンクレジット市場とは独立した文脈で評価する必要がある。
個人向けに発行される購入証明書は、コーポレート/カーゴプログラムで発行される第三者認証のCO2削減証書とは異なり、簡易的な証明書である。
ただし、二重計上の防止などプログラムの信頼性を担保するため、第三者機関がSAF在庫の詳細とプログラム内での配分状況を定期的に監査している。証書の性格上、法人向け認証証書と同等の対外的な削減主張の裏づけとしては扱いにくい。